政治

ウクライナ「運命の3週間」となる「ドンバス会戦」の行方

2022年4月29日

戦局は4月18日から、ロシアがドネツク州北部の完全占領を企図する「第2次攻勢」に移ったと考えられる。その節目が5月9日の対独戦勝記念日に置かれているなら、ウクライナは運命の3週間の只中にあるといえるだろう。まさにシナリオの分岐点にあるこの戦争の行方を、開戦以降の展開で加わった政治的・戦略的な諸条件をもとに捉え直す。

これまでの展開

戦争は新たな段階に入った

 2022年2月24日、ロシアとウクライナの戦争が始まった。ロシア軍はキーウ北方、ハルキウ方面、ドンバス方面、クリミア半島の4方向からウクライナに侵攻した。しかし予想外の頑強なウクライナ軍の抵抗と巧妙な作戦指揮、そしておそらくウクライナ軍を過小評価していたが故の補給の困難や士気の低下にロシアは苦しんだ。南部の要衝、ヘルソンの攻略には成功し、東部のルハンシク州でも占領地域を拡大させてきたが、ドネツク州ではウクライナ軍の防御陣地を突破できず、またキーウ周辺でもウクライナ軍の反撃により包囲を阻止された。こうした状況に直面し、ロシアは東部ドンバス地方への攻勢に集中するとして3月末にキーウ方面の部隊をベラルーシ国境まで撤収させ、作戦の再構築を図った。 

 この時点で、筆者はロシア軍には2つのオプションがあると考えていた。1つはキーウ攻略部隊を単純に東部に移動させるオプションであり、もう1つはキーウ攻略部隊はベラルーシで休養と補充を行い、ロシア本土から動員した兵力でドンバス地方を狙った攻勢をかけるオプションである。

 率直にいうと、ロシアは後者のオプションを取ると筆者は考えていた。キーウ攻略部隊は昨年秋からベラルーシで演習を続け、さらにキーウ周辺での激戦を経て疲弊している。まずは戦力回復が急務であるし、これらの部隊がベラルーシ領内にとどまる限り、ウクライナはキーウ防衛のためにある程度の部隊を前線のドンバスではなく、キーウ周辺に維持しなければならなくなるため、ドンバス方面での兵力比はロシアに有利になる。もちろん十分な兵力をロシア本土から動員できるということが前提になるが、ロシアの目標達成可能性は後者の方が高いと考えたからだ。

 しかしロシアが選択したのは前者だった。キーウ攻略部隊を全面撤退させ、ベラルーシ領内から東方に移動させた。ただし、陸上部隊の再配置には装備や補給物資の移動を伴うため、これにはある程度の時間がかかる。キーウ北方のベラルーシ領に撤収させた部隊を東部ドンバス方面に転用する場合、投入先としてはハルキウ方面とルハンシク方面の2つの可能性がある。ハルキウ方面の場合、撤収させた先のベラルーシ領ホメリから約600キロ、ルハンシク方面の場合、1000キロ以上離れている。……

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