政治

“使える”セキュリティ・クリアランス法制のために積み残されている課題(下)

2024年2月18日

新法制において、民間由来の重要技術情報に関する秘密指定事例は著しく狭いものとなる可能性が高い。そうなれば当然、その情報を扱う資格(クリアランス)の保有者も増えないだろう。機微技術の知的財産権の帰属先や、国内法制に海外での通用性を持たせるための各国政府との取極など、更なる議論が必要な要素は少なくない。

※(上)より続く

  • “使える”セキュリティ・クリアランス法制のために積み残されている課題(上)

 元々のニーズが経済安全保障分野において国際的に通用し得る秘密取扱資格制度の創設であったことを踏まえれば、実際の秘密指定事例が狭められかねないことは大きな課題となるだろう。当然のことながら、秘密指定されない情報に与えられる取扱資格(クリアランス)はないからだ。指定対象の情報の範囲が狭ければ、クリアランスを保有する民間人も増えない。

 2023年10月の段階で、有識者会議の議論においても、委員の一人から当該例外規定についての問題提起がなされたことはある。しかしそれ以前、企業ヒアリングの段階(2023年3月)で、一つの企業から、民保有の機微な技術情報はCUI(controlled unclassified information、秘密ではない保護情報あるいは注意情報)であるとして秘密指定に慎重な姿勢が示されたことが意図せずその後の議論を方向付けてしまったような印象がある。その後の議論では、秘密指定の対象となるのは民間由来であるにせよ政府保有の情報のみであるとされ、民間の機微な情報としてこの場で位置付けられたCUIについては、セキュリティ・クリアランス制度の枠組みの外における管理の必要性が検討される方向となった

 このような秘密指定制度を超えて機微な情報を管理していく裾野の広い考え方そのものは、何ら否定されるべきものではない。しかしながら、元々のニーズが防衛装備品に関係しない機微情報の取扱資格の策定にあったことに鑑みれば、そのような方策は当該ニーズに十分対応できるものではない。セキュリティ・クリアランスは秘密取扱いに際して付与されるものであり、秘密ではない情報の取扱資格がこれを代替することはできないからだ。当然ながら、米国等の諸外国においても秘密取扱資格として通用するものではない。そして、日本企業の国際展開の円滑化に資するのか疑問が持たれる。

 秘密指定を受けた情報の厳格管理やその取扱資格獲得に要する負担・コストと、それによって得られる国際的なビジネスチャンスは表裏一体のものであり、便益のみ選択することは不可能だ。政府は新制度の法制化に当たり、本来のニーズに立ち返った上で、科学技術の自由な発展の視点にも留意しつつ、上記で挙げた米国の例外規定も参考により実効的な内容を検討すべきである。

 もっとも、制度のみ創設しても、先端的な民生技術を秘密指定する基準を持つことは容易ではない。しかし、上記の米国における例外規定を見ても、政府が民生技術を一方的に秘密指定する枠組みではない。有識者会議では、ヒアリングを受けた企業も、機微な企業情報が秘密指定を受けることを完全に否定しているわけではなく、企業と相談しながら慎重に進めるべきだと発言している。技術を生成した企業・研究所等と相場観を共有していくしかないだろう。

誰にその権利が帰属する情報か

 第二の課題は、米国大統領令第13526号の例外規定と同様の基準を導入する場合、知的財産の帰属関係をどうするかという問題だ。具体的には、政府資金を提供した研究成果のうち機微な技術(知的財産権)を国の帰属とすることを検討する必要がある。……

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