※本稿は「週刊新潮」2010年4月22日号に掲載された特集を元に再構成したものです。また、年齢や肩書は当時のものです。
本の帯の原稿のためだけに3日間
筆の遅い作家は珍しくないが、編集者から恐れられもし、尊敬されもした作家の井上ひさし氏。「遅筆堂」というペンネームを持つだけあって、原稿が締め切りに間に合わないことがしばしばあった。
井上氏の担当だった岩波書店元社長の大塚信一氏はこう語る。
「先生の住まいが(千葉県)市川市にあった時代は、1階の応接室に常時2、3人の編集者が詰めていました。ご存知のとおり、先生は遅筆でね。早くても、締め切りから3日、遅いときでは1週間も遅れることがあったと記憶しています」……