メジャーリーグで話題になった「魚雷バット」は、インコースが苦手な打者の弱点をカバーして開幕当初はホームランを量産した。しかし、データが蓄積され相手バッテリーが対策することで、採用した選手も次第に例年通りの成績に落ち着いていった。データの活用は用具や戦術の進化を支えているが、使い方次第では野球の魅力を損ないかねない。イチロー氏が「感性が消える」と危惧するように、マイナーリーグではデータを意識しすぎた没個性的な選手の姿も目につくようになっている。
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今季はじめ、トルピード(魚雷)と呼ばれるバットがメジャーリーグベースボール(MLB)を席巻した。魚雷バットは従来のバットのように先端に向けて次第に太くなるのではなく、先端から10cmから20㎝の部分を最も太くし、先端にかけてまた細くなるといった形状である。特にニューヨーク・ヤンキースで複数の選手が使用し、開幕からホームランを量産するなどの好結果が見られた。ヤンキースのジャズ・チザムJr.選手は「いつものバットと違和感はなく、少し助けられている感覚がある」と話し、自然なフィーリングで使える点を評価していた。同僚のアンソニー・ボルピ選手も同様にその効果を語っていた。
このバットの発明者は、現在マイアミ・マーリンズのフィールド・コーディネーターを務めるアーロン・リーンハート氏で、MIT(マサチューセッツ工科大学)で物理学の博士号を取得した経歴を持つ人物だ。打者たちの「コンタクトしたいゾーンとバットの太い部分が一致していない」という気づきから、彼は「スイートスポット周辺に質量を集中させる」というコンセプトのもと、この新たなバット産み出した。……