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Vol. 5

賢人4人が語るガルシア=マルケス『百年の孤独』の迷宮

2026年5月2日


<span>賢人4人が語るガルシア=マルケス『百年の孤独』の迷宮</span>
単行本版と文庫版の『百年の孤独』

 2024年に文庫版が発売されたガルシア=マルケスの『百年の孤独』は、出版業界にとって一つの“事件”と言われている。単行本の出版から50年以上が経っているうえ、661ページにも及ぶ難解な作品として知られる同作が、飛ぶように売れたからだ。発売1カ月で7刷26万部に到達したあとも版を重ね、2025年末時点での累計部数は40万部を超え、今も売れ続けているという。なぜこの作品はこれほどまでに人を惹きつけるのか。4人の識者にその魅力を聞いた。

※本稿は「週刊新潮」2024年8月8日号に掲載された特集を元に再構成したものです。また、年齢や肩書、年代表記等は当時のものです。

「読書に必要な“筋力”がつく」 野谷文昭 東京大学名誉教授

 鼓直(つづみ・ただし)さんの訳が1972年に新潮社から出版される前年、キューバで『百年の孤独』の原書に出会いました。当時日本ではまだ、ラテンアメリカ文学の翻訳小説というのはとても少なかったのです。

 世界ではラテンアメリカ文学のブームが既に始まってはいたにもかかわらず、日本では第三世界の文学と見做されて、欧米の支配に対する「抵抗の文学」「抗議の文学」「証言の文学」という文脈で語られることが普通でした。

 そこに燦然と現れたのが、『百年の孤独』です。邦訳されていた作品が、自国の圧政と欧米や西洋に対する反抗という立場で書かれていた“古い小説”だったのに対して、『百年の孤独』は中南米の文化や、民衆感情に立脚した、独立した小説として書かれていました。これが驚きでしたね。……

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