「胃弱派」文学者の代表格
『こころ』『夢十夜』『坊っちゃん』『吾輩は猫である』……。誰でも一度は触れた覚えありなのが、夏目漱石作品だ。好きな作家として名を挙げる向きも多いが、お気に入り作品を問うと人それぞれ、かなりのバラツキが出るのも特徴だ。
まずはその生涯を駈け足で振り返ってみる。1867年(慶応3年)に江戸の牛込馬場下横町で生まれた漱石は、正岡子規と交遊しながら、1893年(明治26年)帝国大学(東京大学)を卒業。さらに大学院も出て、松山と熊本で教師を務める。2年間のイギリス留学を経て、帰国後、帝国大学の講師となるが、その傍ら『吾輩は猫である』を執筆。作家となる礎を築いたのはこの頃だ。その後、大学を辞めて東京朝日新聞社に入社。『三四郎』などの代表作を次々と執筆していく。1916年、49歳となった漱石は持病の胃潰瘍が悪化し、逝去。『明暗』は未完の名作として現在に知られる。
特に、漱石は言文一致を確立し、文学史上でも重要な作家とされる。
阿部教授は漱石をどう読み解くか。まず、漱石の多才さと、作品の多彩ぶりを指摘する。……