政治

【北朝鮮社会の「思考」を読み解く】北朝鮮社会を規制する「党の唯一的領導体系確立の10大原則」とは(1)「一色化」

2021年5月17日

北朝鮮の行動を分析・予測するためには、その奥底にある価値観や世界観を知らなければならない。その意味で最も重要なのが、「10大原則」と呼ばれる文書なのだ――これまで大きく報じられることのなかったこの文書を、元帰国者で朝鮮労働党幹部を務め、その後脱北した筆者が解説する。

 金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総秘書(総書記)が権力を握ってから10年目になる。2代目の金正日(キム・ジョンイル)の死亡時には「世襲政治の終焉」「崩壊間近」などと希望的観測を唱えていた北朝鮮問題のプロたちは、今でもマスコミや論壇で「活躍」している。そればかりか事あるごとに「崩壊説」「異変説」を吹聴している。これは初代の金日成(キム・イルソン)死亡時と同じパターンの繰り返しだ。

 北朝鮮は経済が逼迫していると言うのに何故、「崩壊」もせずに「反乱」も起きないのだろうか? あんなに貧しいのに核兵器やICBM(大陸間弾道ミサイル)を作れるのは何故か? 社会主義を標榜しているくせに3代に至る王朝のごとき世襲を人々はどのように考えているのだろうか? 疑問は深くなるばかりで、人々へ何らかの答えを与える分析や報道は稀でモヤモヤ感を増長させているだけである。

 北朝鮮の情報伝達には大きく2通りある。1つは北朝鮮当局の対応や報道、米韓情報機関や研究所の発表や分析。もう1つは脱北者の証言本や様々なルートを通じた内部情報の記事などだ。

 こうした情報の特徴は、裏付け不可能で断片的・短絡的であり、体系的ではなく「インテリジェンス」とは言い難い。もちろん分析本もなくはないが、表向きの権力構造や制度、政策などのハードウエアについて語っているだけで、書店に並んでいる各国の旅行ガイドブックとさして変わらない。……

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