政治

【Analysis】ロシア産代替は困難イラク「クルド自治区」ガス輸出を阻む内部対立

2022年6月22日

ロシア産に代わるエネルギー確保が急務の欧州に、売り込みをかけているのがイラクのクルド自治政府だ。本来の埋蔵量からすれば十分な輸出ポテンシャルを持つが、現状は自治区内への供給もままならず、輸出計画も二大政党の対立で行き詰まっている。

[イラク・スレイマニヤ発(ロイター)]イラク・クルド自治政府のマスルール・バルザニ首相は、ロシアに代わる天然ガスの供給源として、自治区のガス輸出能力を喧伝している。だが、バルザニ首相率いる与党「クルディスタン民主党(KDP)」と、故ジャラル・タラバニ元イラク大統領が率いてきた連立政権の下位パートナー「クルディスタン愛国同盟(PUK)」の二大勢力が対立している影響で、現時点での実現可能性は高くない。KDPが欧州にガス輸出計画を売り込む傍らで、PUKが企業や顧客との交渉から排除されたことに不満を募らせ、計画を阻止しているためだ。

 それ以前に、クルド自治区では域内への電力供給もままならない。自治区内にある13カ所の発電所のうち、5つはガスを使っているが、ガス不足のために能力の5割から7割しか発電できていない。まずは地元へのエネルギー供給が喫緊の課題なのだ。

 与党KDPとPUKは長い間勢力争いを続けてきたが、この数カ月で事態は悪化している。背景には、ガス問題をめぐる対立の他に、KDPが今年3月のイラク大統領選に慣習を破って候補者を立てたことがある。イラクでは首相をシーア派、連邦議会議長をスンニ派、大統領をクルド人から選ぶことになっており、従来この二つの政党は、大統領はPUKから、自治区首相はKDPから選出することで権力を分かち合ってきた。

 両党の幹部たちは何カ月もの間、まともに言葉を交わしていなかったと、自治区高官らは証言する。5月になって、バルザニ首相のいとこで自治政府の大統領でもあるネチルバン・バルザニがスレイマニヤを訪れてPUK最高幹部と面談した。数カ月ぶりのトップ会談だった。その後、幹部同士の会合が開かれ、安全保障や10月1日に行われる予定のイラク議会選挙について話し合いが行われたが、大きな成果にはつながっていないと西側外交筋は分析する。……

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