<span>『木挽町のあだ討ち』永井紗耶子が語る「私の3冊」――太宰治で知った相性の良い本の見つけ方</span>
トークイベント「文学茶話」に登場した永井紗耶子さんと、司会をつとめた山内氏(撮影:藤井さくら)

『木挽町のあだ討ち』永井紗耶子が語る「私の3冊」――太宰治で知った相性の良い本の見つけ方

2026年6月19日

文学ファンの集うトークイベント「文学茶話」が、3月に開かれた。会場となった高輪ゲートウェイ駅前「BUNKITSU TOKYO」に登場したのは、時代小説の旗手・永井紗耶子さんである。2023年刊行の『木挽町のあだ討ち』(新潮社)で直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞し、同作が映画化・公開となったばかり。注目集まる永井さんを招いて行なわれた今回のテーマは、「わたしの3冊」を語るというもの。最近の著書、それを書くに至るきっかけとなった過去の自著、さらには作家としての自信をかたちづくった本をひもとくことで、永井作品の特性を浮かび上がらせようという趣向だ。

『青青といく』(KADOKAWA)

その音の響きは、字で見るよりも遥かに明るく、跳ねるように聞こえる。「いいねえ。自由はいい」

 一冊目として永井さんがピックアップしたのは、ことし2026年に刊行の『青青といく』である。

 同書でスポットが当たるのは、江戸の儒学者であり経世家でもあった海保青陵。自由奔放に生き、経済の大切さを説いて回ったとされる人物だ。作中では当人が早々に亡くなり、そののち弟子筋が関係者を訪ねてまわるうち、時代を先駆けた海保青陵という人物の大きさが改めて浮かび上がってくる構成となっている。

 不思議なのは、なぜ海保青陵を一編の主役として取り上げたのか、だ。ユニークな傑物には違いないが、彼は日本史上一級の著名人とは言えず、その名に聞き覚えのある向きも少ないだろう。

 そのあたりを永井さんに問うと、そこは歴史上の新たなスターを発掘したいねらいと意欲があってのことだという。

永井紗耶子(以下、永井):
 司馬遼太郎『竜馬がゆく』で坂本龍馬が広く知られるようになったのを最大の成功例として、歴史小説を手がける者としては、やはり歴史上の人物の『発掘』にあこがれます。そのタネはいつも探していて、自分のなかにあれこれストックがあります。

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