中傷動画を巡る質問は「事前通告」されていた
文春報道に関して野党の追及を受ける高市首相の答弁の“脆さ”は、まさに「チーム高市」の危機管理の脆弱性を表していると思います。巷間よく言われているように、高市首相は「すべてひとりで抱え込んでしまう人」。よく言えば非常に努力家で勉強熱心ですが、悪く言えば他人とのコミュニケーションを避ける人でもある。今回の件でも、国会でどう対応すべきか、事前に官房長官や秘書官に相談しなかったと言われています。
こうした傾向は、総理大臣就任以来の行動にも表れていました。これまで歴代の総理は、朝に秘書官たちを集め、「今日の国会質問にはこういう答弁ラインで行きましょう」と、読み合わせをしていました。ところが、高市首相は違います。みんなで集まるようなことは一切せずに、ひたすら自分ひとりで資料に赤ペンを入れ、答弁を考えているのです。疑問があった場合のみ、秘書官に個別に問い合わせるというスタイルです。
今回、予算委員会で中傷動画を巡る質問を行った中道改革連合の伊佐進一議員は、前日の昼には質問通告をしています。そこには、「週刊文春が公開した秘書と動画作成者の打ち合わせとされる音声について確認してください」と書かれていたので、通常であれば通告を確認した内閣官房が「これは高市事務所が答えるべき案件であって、官僚では答弁を用意できない」と判断し、政務担当の秘書官に対応を促せたはずです。ところが、高市政権はそうした当たり前のコミュニケーションすらできなくなっているわけです。
その要因を1つ挙げるとすれば、政務担当の秘書官が、高市事務所の方ではなく経産省出身の飯田祐二氏だということはあるかもしれません。ただ、安倍政権の時の今井尚哉秘書官も事務所の人間ではありませんでしたが、森友・加計問題などでは安倍総理本人や安倍事務所と緊密に協議して対応方針を決めていました。
ところが、今の官邸は本来であれば緊密に連携すべき問題も、「高市事務所の案件だから」と高市首相に丸投げしてしまっている。その結果、高市さんは翌日の朝3時半に事前通告を知ることになる。ただそこからでも、秘書官たちに相談すれば件の音声はいくらでも準備できたはずですが、結局自分だけで抱え込んでしまい、「文春の有料会員にはなりたくないから確認しない」という判断のまま、予算委員会の本番を迎えてしまったわけです。
昨年の予算委員会での台湾海峡をめぐる「存立危機事態」発言と同様、自分で抱え込み、自分の考えだけで判断してしまうがゆえに、このような事態に陥ってしまうのです。
危機管理の戦略が定まらない
高市さんの「他人に相談しない」という特性は、「ブレない」という肯定的な評価につながることもあります。しかし、人の意見を聞かず、耳に入る情報も偏ってしまうので、特に今回のような「不意の出来事」ほど、対応を見誤る可能性が高くなってしまいます。