ロシア・ウクライナ戦争の「潮目が変わった(turn the tide)」とタイトルに掲げる論考が、米「フォーリン・アフェアーズ(FA)」誌と米「フォーリン・ポリシー(FP)」誌に相次いで掲載されました(いずれも詳細は後述)。3月に始まったロシアの春季攻勢が失敗し、FA誌は停戦が「現実的な可能性」になったと表現します。
ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は6月4日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対して戦争終結に向けた首脳会談を呼びかける公開書簡を発表しました。「この戦争から抜け出す道を選ぶことを恐れるな。いまあなた[プーチン氏]に最も求められているのは、その決断だ」。ゼレンスキー氏はそう記します。背景にあるのは、長距離ミサイルと高精度ドローン使い前線から離れたロシア軍の兵站目標を攻撃するウクライナの戦術が奏功したことや、歩兵・無人システム、砲兵、装甲部隊の統合運用の強化に成功しつつあることなどが指摘されます。ウクライナはイランからの攻撃に晒される中東湾岸諸国に対し、迎撃ドローンによる防空ノウハウを提供する見返りとして防衛産業協力協定を結びましたが、こうした追い風も今回の公開書簡と無縁ではないでしょう。
片やロシアは、軍組織の中間階層でコネの利用や賄賂の要求が蔓延し、作戦遂行能力が低下しているとも伝えられます。戦争は、交戦者のどちらかに「終わらせる合理的理由」が生まれなければ終結しません。今はウクライナに有利な要素が生まれる中で、ゼレンスキー氏は「ロシア国民は疲弊している」「インフレや燃料不足が起きている」「このまま戦争を続ければプーチン体制も危うい」という論法でプーチン氏を説得しようとしている形です。
ただ、プーチン大統領はこの公開書簡を一蹴しました。サンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラム全体会合の場で6月5日、「無礼だ」と切り捨てたと伝えられます。ロシアとウクライナは6月2日に、トルコのイスタンブールで2022年以来2度目の直接交渉を行っていますが、ここでもロシアの要求は、ウクライナがルハンスク、ドネツク、ザポリージャ、ヘルソン各州から全面的な軍事撤退を開始するなど譲歩の気配を見せないものだったようです。戦争の「潮目が変わった」と言うのはまだ難しい印象もありますが、ロシアの全面侵攻開始時と現在とでは、戦術レベルから国内の兵力補充体制に至るまで、両国に大きな変化が生まれていることを踏まえておきたいところです。
今週はイーロン・マスク氏率いるスペースXによるIPO(新規株式公開)が予定されています。調達金額は750億~860億ドル(約12兆~13.8兆円)。早ければ今年の秋ごろまでに、米新興AI(人工知能)企業のアンソロピックとオープンAIも上場する見通しです。いずれも上場後の時価評価額は1兆ドルを超えると見られ、市場がこれほど巨大な案件群を吸収できるかが試されます(大型IPOラッシュはバブルの終わりによくある光景との指摘も)。今回は上記のロシア・ウクライナ戦争関連に加えて波乱含みのマーケット分析、終わりなき戦争をむしろ選び取ろうとしているようにも見えるイラン、そしてドイツの国連安保理非常任理事国“落選”をめぐる記事など全9本をピックアップしました。
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Can the stockmarket swallow SpaceX, Anthropic and OpenAI?【Economist/6月1日付】
「彼らの株式市場へのデビューは史上最大の規模になると見込まれている。報道によると、スペースXは6月11日に投資家から750億ドルを調達する予定で、発行された株式は翌日からナスダック市場で取引が開始される見通しだ。イーロン・マスク率いるこのロケット企業に続き、まもなく他の2つの巨大企業も上場する見込みだ」
「人工知能ラボであるアンソロピックは6月1日にIPOの申請書類を提出した。競合のオープンAIも、まもなく申請を行うと見られる。両社とも、それぞれ最大600億ドルの資金調達を目指していると噂されている。こうした3件の巨大IPOが相次ぐことで、数か月のうちに米国上場企業の時価総額は最大4兆ドル増加する可能性がある」
このように始まり、「株式市場は一体、どう対応するのだろうか?」との問いを投げかけるのは、英「エコノミスト」誌の「スペースX、アンソロピック、オープンAIを株式市場は受け止めきれるのか?」(6月1日付)だ。