政治

API国際政治論壇レビュー(2021年5月-1)

2021年5月31日

米中対立がよりいっそう深刻化する中で、欧米メディアでは4月16日の日米首脳会談を好意的に捉える論調が多かった。日米同盟は「やればできる精神(‘can-do’ spirit)」で大きな役割を担い得るという楽観も。一方、日本とアメリカの一体化を警戒する中国では、日米同盟を「平和に危害を加える軸」とする論評がなされている。

概観

   4月16日にワシントンDCで行われた日米首脳会談は、よりいっそう深刻化した米中対立と、大陸からの軍事的圧力の増す台湾の安全保障問題を背景として、画期的ないくつかの成果を含む日米首脳共同声明と、二つの別添文書に帰結した。これはまた、インド太平洋地域において日米同盟がその中核に位置することを示すものでもあった。

   そのような成功には、いくつかの理由がある。まず、バイデン新政権が、それまで日本が促進してきた「自由で開かれたインド太平洋」構想への力強い支持を行ったことによって、両者が同じ目的を共有するようになったことは大きな意義がある。だがそれ以上に重要なのは、おそらく日米首脳会談での第2の別添文書、すなわち「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」で示されているような、日本や他の同盟諸国およびパートナー諸国との提携を通じて、アメリカの技術力、競争力を回復することが目指されていることであろう。アメリカは、米中対立における重要な領域として先端技術をめぐる競争を意識して、アメリカのこの分野の競争力回復が国内経済的にも、また国際社会における米中対立における優位性を確立するためにも、不可欠であると考えているのであろう。

   このような、日米首脳会談の成功と、とりわけ台湾問題をめぐる米中対立の熾烈化は連動している。というのも、今回の日米首脳会談の共同声明で、「台湾海峡の平和と安全」という文言が含まれているからである。はたして、日本は日米同盟を強化することによって、中国との対立の側面が増していき、経済的なデカップリングも進むのであろうか。あるいは、中国との良好な経済関係を維持したまま、安全保障の領域でアメリカとの一体化を進めることは可能なのだろうか。これらの問題をめぐり、この一ヵ月の間に見られた国際論壇における主要な論考を、以下で見ていくことにしたい。

1.成功に終わった日米首脳会談

   2021年4月16日に行われた日米首脳会談は、米中対立の構図がより明瞭になるなかで、自由民主主義諸国が結束し、インド太平洋地域の国際秩序に日米同盟を位置づけることを企図した共同声明を発表した。この日米首脳会談の成果は、日米両国にとっては同盟を強化して、台頭する中国に対する抑止力を構築しようとする上で歓迎すべきものといえるが、他方で中国からすれば日本が日中協力から離れて、台湾問題に介入しようとする好ましからざる、そして警戒すべき動きである。……

おすすめの記事

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの動画

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

ニュースレターを購読する

新潮QUEは、「問う力」を養っていくためのサブスクリプションサービスです。

無料登録する