台湾海峡をめぐり対立を深める米中関係
現在、現在の国際社会での不安定の源泉となっているのが、台湾をめぐる米中の政策の軋轢である。はたして中国は、台湾への武力侵攻と、力による国家統一をいずれ実現するのか。あるいは、抑止力を強化することで、そのような現状変更の試みを日米同盟を通じて阻止することはできるのか。
英『エコノミスト』誌では5月1日号では、「地球上で最も危険な場所」というタイトルの社説を載せている[Leaders, “The most dangerous place on Earth (地球上で最も危険な場所) ”, The Economist, May 1st, 2021]。すなわち台湾である。このタイトルがこの週の冊子の表紙となっており、また記事それ自体も多くの紙幅を割いてこの問題を詳述しており、台湾をめぐる緊張がいかに危険な水準に到達しているのか、そしてそれがいかに国際的に注目されているかが分かる。確かに、中国の人民解放軍が直接台湾本島へと武力侵攻する可能性は現在ではそれほど大きくはないであろう。だが、中国が台湾に対して軍事的圧力をかける頻度と烈度は着実に高まっていることが、国際的な危機感を高める背景となっている。日米首脳会談が行われた4月16日の社説で、フランスの『ルモンド』紙が社説で台湾問題をとりあげているのも、そのような認識が背後にあるのではないか[Editorial, “Taïwan : rester ferme avec la Chine sans la provoquer (台湾:中国を挑発せず、それでもなお毅然と立ち向かう)”, Le Monde, April 16, 2021]。そしてそこでは日米両国、さらにはEUが、中国を挑発することなくしかしながら毅然たる態度で中国の行動に対峙する必要があることを指摘している。フランスの新聞の社説で、これほどまで切迫感を以て台湾問題がとりあげられるということ自体、この問題がグローバルなレベルでの安全保障問題として注目されていることの証左であろう。
他方で、中国からみれば、アメリカが外部から「中国の国内問題」である台湾問題に介入して、国家分裂を背後で煽っている構図となっている。そのことは中国の反国家分裂法に正面から抵触するような、到底容認できない挑発とみられている。4月12日付の『環球時報』紙の社説では、アメリカが「サラミをスライスし続ける」ことによって、事実上、台湾の独立を背後で推進しようとしていると、アメリカ政策の台湾政策を厳しく批判する[「美台情报战舆论战对大陆都不管用(米台の情報戦、世論戦は大陸に対しては役に立たない。)」『环球网』、2021年4月12日]。またそこでは、中国という国家を分裂させることに対して、必要な場合には中国は軍事力を行使せざるをえなくなる場合があると論じている。中国国内においても、台湾独立による国家分裂を阻止するためにも、台湾海峡での米中間の武力衝突が将来的に不可避であると感じさせる論調が強まっているのかもしれない。……