支持率回復の切り札だった東京オリンピック閉会後、菅義偉内閣の支持率は発足以来の最低を軒並み更新、NHKや朝日新聞の世論調査では30%を切っている。そうしたなか、デジタル改革を掲げた菅義偉首相の目玉政策、「デジタル庁」でも大失態が生じている。9月1日の発足まで半月を残すばかりの現在でも、核となるポスト「デジタル監」が決まっていないのだ。
デジタル監は、事務次官に相当する事務方トップ。平井卓也デジタル改革担当相を補佐しながら実務を取り仕切る最重要ポストで、平井担当相は民間人から起用する意向を示してきた。8月上旬、「デジタル監に実業家の伊藤穰一氏を起用で最終調整」との報道が各メディアから相次いだことで、ようやく人事が固まったと思われたその矢先、任命権者の菅首相が伊藤氏起用に「待った」をかけたのだ。首相官邸関係者によれば、「これ以上、悪い材料を抱えられない」との事情があったという。一時はクリアできるかに見えた伊藤氏の「過去」が、誤算となった内閣支持率の低下を背景に蒸し返されたのだ。
伊藤穰一氏(55)をネット業界で知らない人はいないだろう。グルメサイト「食べログ」を運営するカカクコムなどを傘下に置くデジタルガレージ(東京)の共同創業者であり、ほかにも数々のIT企業立ち上げにかかわった。2011年には、米マサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボの所長に日本人として初めて就任している。メリハリのある口調、ものおじしないアグレッシブな姿勢。バラク・オバマ大統領(当時)と対談するなど、アメリカで最も注目される日本人の一人になったと言えるだろう。
ところが2019年、伊藤氏はメディアラボ所長を辞任する。未成年の少女らに対する性犯罪で起訴された米国人実業家、ジェフリー・エプスタイン元被告から、MITメディアラボなどへの多額の資金提供が表面化したためだ。エプスタイン元被告は児童買春などで有罪になったほか、少女への性的虐待などの容疑で逮捕・訴追された後、独房で自殺したとされる。だが、不審死だという見方もある。……