政治

リベラル・デモクラシー跡地に現れる中東・イスラーム「ポスト冷戦の実相」

2021年9月11日

米同時多発テロから20年を迎える中で実行されたアメリカのアフガニスタン撤退は、「リベラル・デモクラシーの勝利」というポスト冷戦を規定した「仮説」の終焉を示している。その理念の実験場となってきた中東・イスラーム世界は、アメリカ主導という特殊条件下の三十数年に何を蓄え、どう変容を遂げたのか。これまで靄の向こうに目を凝らすしかなかった実相が、いま一気に立ち現れようとしている。

 今年の9月11日の米同時多発テロ記念日は、さほど注目を集めることもなく去っていくのではないかと、一時は思われた。近年は9・11事件の記憶も薄れつつあり、記念日に取り立てて目を引く報道やイベントがないままで過ぎるようになっていたからである。年を経るにつれて、実行犯の逮捕・起訴・公判といった新事実も出なくなり、犠牲者の追悼や遺族の回顧といった切り口も新味がなくなってくる。いきおい、メディアでの取り上げ方もおざなりに、型通りのものになってきているように見えた。

 それも当然である。9・11事件後に生まれ、この事件の発生とその後の国際情勢の変転をリアルタイムで目撃し過ごしてきた経験を持たず、現代という時代を決定づける共通体験としてこの事件を実感することがなしえない新世代も、すでに成人に達してきている。この事件を切り口にして現代の国際政治や社会を論じるという語り方・視点そのものが、多くの人にとって古臭い昔話に感じられる日が、やがて来る。いや、気の早い人にとって、その日はもうとっくに来ていたのかもしれない。

バイデン演説の「ちゃぶ台返し」

「9・11とその時代」というテーマへの関心の希薄化を一変させ、過去20年を一時代として振り返り検討し討議する状況を再び呼び覚ましたのは、やはり超大国米国の新たな一手とそれが引き起こした波紋だった。

 ジョー・バイデン大統領が強い意志をもって8月末に設定した期限までに完了させた、アフガニスタンからの米軍撤収と、同時に進んだターリバーンの復活と首都制圧、あっけないアフガニスタン政府の崩壊、それに伴って生じたカーブル空港に押し寄せ飛行機にしがみつく国外退去を求める群衆の波という一連の事象は、米軍の撤収という個別の政策そのものの評価・検討を促すにとどまらず、米国による過去20年間のアフガニスタン介入の意味と帰結、ひいては「対テロ戦争」そのものに、再考を促した。……

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