4.米軍撤退のその後
■アメリカの「深刻な能力低下」を強調するロシアと中国
8月15日のカブール陥落、そしてそれに続く米軍の撤退をめぐり、国際論壇では引き続き多くの議論が展開した。アメリカ国内では、バイデン政権の政策への賛否が論じられ、それ以外の諸国でも地域情勢や、さらには世界情勢に及ぼすであろう影響に検討が加えられている。
トランプ政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めた、元陸軍中将のハーバート・マクマスターは、アフガニスタン駐留軍司令官を務めた経験からも、バイデン政権のカブールからの拙速な米軍撤退の方針を批判している[H.R. McMaster and Bradley Bowman, “In Afghanistan, the Tragic Toll of Washington Delusion(アメリカの思い違いがアフガニスタンにもたらした悲劇的損失)”, The Wall Street Journal, August 15, 2021]。このことによって、アフガニスタンで今後テロリストが育成される危険があり、またジハーディストが将来、アフガニスタン国外でテロリズムを実行する危険が高まるであろう。
ウォルター・ラッセル・ミードは、今回のアメリカの挫折は、アメリカの軍事的な信頼性は損なわないかもしれないが、「アメリカは実効的な政策を策定し、それを維持する能力が欠落している」という認識が広がっていることを懸念している[Walter Russell Mead, “The Deeper Crisis Behind the Afghan Rout(アフガンでの大敗の裏にあるより深遠な危機)”, The Wall Street Journal, August 23, 2021]。そのような認識が広がること自体が、将来のアメリカの行動の制約要因となるであろう。さらにミードは、アメリカ国内でこの問題をめぐり共和党と民主党が責任をなすりつけ合って、党派対立とイデオロギー的分裂が深まっていくことを懸念する。ミードが述べるように、党派的対立を超えて、アメリカが抱える困難な課題に適切に対処していかなければならない。やはり、このカブール陥落がアメリカの対外政策にこれから及ぼすであろう負の要因が強調される傾向が見られる。……