政治

韓国 徴用工訴訟、迫る「現金化」回避に残されたシナリオ(上)

2021年11月15日

韓国国内でも異論はある2012年の大法院判断だが、三権分立の制約により一度下された司法判断を無効化することは難しい。このままでは、日本企業が韓国で所有する資産の現金化が、早ければ2022年半ばにも始まる見通しだ。

危機は9年前から

 韓国の徴用工をめぐる訴訟で、大法院(最高裁)が日本企業に賠償を命じる判決を確定させてから10月30日で3年となった。被告の日本企業が所有する資産を現金化する手続きは最終段階にまで進んでいる。今年1月に文在寅大統領は記者会見で日本企業の資産の現金化は「望ましくない」と述べた。ただ、そうした「本音」を明かしてみせたものの、司法手続きに直接的に介入することはできず、現金化への流れは止まっていない。最も手続きが進んでいる三菱重工業の場合、地裁が2021年9月に資産(商標権2件と特許権2件)の売却命令を出した。翌月に三菱側は即時抗告をしたが、早ければ2022年半ばには棄却されて現金化が現実のものとなるという見通しが出ている。結局、文在寅政権は、原告たちと日本政府の双方が受け入れられる解決策を打ち出すことができないまま、3年が過ぎた。

 この危機は、しかし、3年前から始まったわけではない。発端は、2012年5月に大法院が初めて日本企業に賠償責任があるという司法判断を示したことだ。つまり、9年も前から、現在のような事態になる可能性が低くないことは予見できていた。この間、前の朴槿恵政権も含めて、韓国政府が何も手を打たなかったわけではないが、三権分立という原則を乗り越えられずにいる。

 今後、日本企業の資産が現金化され、日本政府が何らかの対抗措置をとり、韓国政府も応酬する……という負のスパイラルに陥るのを土壇場で避けるためにどうすべきかを今一度考えるうえで、改めて9年前の司法判断を検証してみたい。

日韓基本条約の曖昧さを突いた2012年判断

 2012年、韓国大法院は徴用工訴訟と日韓請求権協定の関係について、以下のように判断した。……

おすすめの記事

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの動画

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

ニュースレターを購読する

新潮QUEは、私たちが「問う力」を養っていくためのサブスクリプションサービスです。

無料登録する