フランス大統領選は4月24日、決選投票を迎える。4月10日の第1回投票では、極右政党、国民連合(RN、2018年に国民戦線=FN=から改称)のマリーヌ・ルペン候補が、現職で中道政党、共和国前進(REM)のエマニュエル・マクロン大統領とともに決選へ歩を進めた。17年の前回大統領選と同じ顔ぶれだが、状況はかなり異なる。マクロン氏は前回、決選で66.1%を得票、33.9%のルペン氏を退けた。世論調査によれば、今回もマクロン氏優勢だが、両者の差は数ポイントまで縮まっている。フランス政治の底流で何が起きているのだろうか。
さらに洗練された「脱悪魔化」
筆者が最初にパリへ赴任していた1990年代、国民戦線と言えばフランス政治の周縁に位置付けられる過激な小政党でしかなかった。マリーヌ・ルペン氏の父親ジャンマリ・ルペン党首の時代で、掲げる理念は移民排斥や反イスラム、歴史修正主義、反ユダヤ主義、欧州連合(EU)離脱など、少なくともその時点では危険もしくは荒唐無稽に聞こえる極端な主張ばかりだった。
2002年の大統領選で、ジャンマリ・ルペン氏は予想外の決選投票進出を果たし、フランス社会に衝撃を与えたが、決選では現職のジャック・シラク大統領に82%対18%の大差で敗れている。極右が決選に進出した原因も、第1回投票の投票率が歴史的低水準だったことから生じた偶発と受け止められた。
状況が大きく動くのは、2010年代になってからだ。11年にジャンマリ・ルペン氏の3女のマリーヌ・ルペン氏が党首に就任し、党の「脱悪魔化」に乗り出す。周縁部の小政党を国民政党に脱皮させるため、掲げる政策のマイルド化が始まった。例えば、反イスラムの基調は変えずに、その主張をフランスの国是であるライシテ(非宗教性)の強調や、女性の抑圧反対のスローガンに紛れ込ませた。歴史修正主義は見直し、反ユダヤ主義的発言をした父親を党から除名している。……