政治

NATO戦略概念を読む(上)――「前方防衛」への転換

2022年7月20日

今後10年のNATOの行動指針となる「戦略概念」が12年ぶりに改訂された。ロシアを「脅威」、中国を「挑戦」と見なしたことが注目されるが、最も重要なテーマはバルト諸国をいかに防衛するかだった。ロシアによる侵略の際には一時的に退却し、後に解放を目指すのがNATOの方針といわれてきたが、占領を許さない「前方防衛」への移行が示された。そのためには前方展開の強化も必要となり、NATOによる対露抑止・防衛態勢は大きな転換点を迎える。(こちらの後編に続きます)

 NATO(北大西洋条約機構)は、2022年6月29-30日にスペインの首都マドリードで開催した首脳会合で、新たな戦略概念(Strategic Concept)を採択した。これはNATO最高位の戦略文書であり、2010年以来の改訂となった。ロシアを「最も重大かつ直接の脅威(the most significant and direct threat)」と位置づけ、対露抑止・防衛態勢の抜本的強化を打ち出した。

 今回の首脳会合と戦略概念に関しては、2022年2月から続くロシア・ウクライナ戦争を受けてのウクライナ支援や、戦略概念での中国への言及が注目された。しかし、NATOにとっての最も重要な任務は加盟国の防衛であり、その強化策が今回の目玉だった。この点は冒頭で強調しておきたい。

   具体的には、バルト諸国やポーランドなどの東部方面(Eastern flank)に展開するNATO部隊の増強と、NATO全体としての即応態勢の強化が大きなテーマとなった。ウクライナにおけるロシアの破壊や殺戮を受け、NATOは自らの防衛計画の再検討が必要になったのである。

   まず本稿(上)では、NATOの対ロシア認識を確認したうえで、ロシアによる占領を阻止することが必須になった状況を受けた「前方防衛」への転換に焦点を当てる。(下)では、それを支える即応態勢について検討したうえで、ロシアの先にある中国という挑戦について考えたい。……

おすすめの記事

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの動画

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

ニュースレターを購読する

新潮QUEは、「問う力」を養っていくためのサブスクリプションサービスです。

無料登録する