ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、欧州の結束が問われ続けている。「欧州は結束しているのか?」、「欧州の足並みは揃っているのか?」という問いへの答えは、期待値によって変わる。欧州は完全に結束すべきだしそれが可能だという出発点に立てば、現実の欧州は足並みの乱ればかりが目につく。他方、欧州には複雑な利害の相違があり、足並みはいつも乱れているという出発点であれば、現実の欧州の結束度合いは画期的ですらある。
この問いを考える際は、まず自らの前提・出発点について意識的になる必要がある。そうしないと議論は噛み合わない。
そのうえで以下では、欧州諸国の結束の実態を読み解いていきたい。まずはEU(欧州連合)における対露制裁、対ウクライナ支援における結束の意味を考え、支援額の格差における地理的要因、そして、今回の戦争で何を追求するのかに関する相違を検証したい。なお、エネルギー危機に関連した結束の問題については別稿で論じることにする。
結束を続けるEU
まず確認すべきは、EUに関する限り、対露制裁については、すべて全会一致で採択されてきたということだ。制裁パッケージが特定国の反対(拒否権)で否決されたことはない。ただし、意思決定にいたる過程では、さまざまな加盟国が自国の利益に基づく要望を出すことは当然であり、また、制裁対象の限定や履行の猶予を求めるようなことも通例である。そうした過程の結果が、EUの制裁措置である。……