ロシアによるエネルギーの武器化を含めたエネルギー危機の深刻化によって、欧州はまさに「戦時経済」に引き込まれることになった。エネルギー価格の高騰は、各国の景気にも大きな足かせとなっている。そうしたなかで欧州は、脱ロシア化やエネルギー安全保障という課題に向けて、いかなる舵取りをしようとしているのか。
実態として進む脱ロシア:いま問われるべきこと
本稿「上」でみたように、EUはロシアからの石炭・石油に加えて天然ガスの輸入禁止(禁輸)に関する決断を迫られる前に、ロシアが輸出を大幅に削減してきたため、結果として、強制的に脱ロシアをほぼ実現してしまったというのが実態である。
ただし、その前の段階から、ドイツはロシアへのエネルギー依存を軽減する方針を進めていた。独経済・気候保護省は、2022年5月1日に発表した進捗報告で、対露依存は、2021年比で石油は35%から12%に、石炭は50%から8%に、天然ガスは55%から35%に、すでに低下したと明らかにしていた。そして、諸条件が整えば、石油の完全脱却は2022年の夏の終わりまでに、天然ガスも2024年夏までに対露依存脱却が可能との見通しを示していた。
オラフ・ショルツ政権は、2022年3月の時点では、石油・天然ガスの禁輸を明示的に否定していたものの、その後、脱ロシアの道筋を着実に定めていたということだろう。結果として、天然ガスに関する脱ロシア化は前倒しを迫られたわけだが、春以降の路線の延長線上のことだったともいえる。……