世界的に急増するボランタリー・クレジット
世界的に脱炭素の取り組みが広がるなか、温室効果ガス(GHG)の排出削減量や吸収・除去量を取引可能にしたカーボン・クレジットへの注目が高まっている。カーボン・クレジットは、再生可能エネルギー(再エネ)の導入や森林保護といった取り組みによるGHG排出削減量等に応じて発行、販売され、カーボン・クレジットを購入した企業は、自らのGHG排出量と相殺(オフセット)することができる。カーボン・クレジットには、国連などの国際機関や各国政府・自治体が管理する公的なクレジット制度(コンプライアンス・クレジット)のほかに、民間の認証機関等が管理するクレジット(ボランタリー・クレジット)があり、とくに足元では、民間主導のボランタリー・クレジットの新規発行が世界的に急増している(図表1)。
カーボン・クレジットは、GHG排出量に経済的な価格を付与する炭素価格(カーボン・プライシング)の一種であるが、法的な拘束力のある炭素税などとは異なり、企業の自主的な活用のための仕組みであり、導入ハードルが相対的に低い。また、制度の自由度も高く、様々な形で活用されている。
たとえば、クレジット発行側では、個人の住宅における太陽光発電を企業が取りまとめてクレジットを発行し、得られたクレジット販売益を個人に還元するといった、個人が参画する取り組みもみられる。一方、クレジット購入側では、企業としてのGHG排出削減だけでなく、商品やイベント単位の脱炭素化にも活用されている。東京ガスなどは、液化天然ガス(LNG)の採掘から液化、輸送、販売、消費に至るサプライチェーン全体のGHG排出量をオフセットした「カーボンニュートラルLNG」を提供しているほか、日本航空などは、乗客が追加費用を支払うことで、航空機利用に伴うCO2排出量をオフセットできるプログラムを実施している。また、2021年の東京オリンピックでは、東京都と埼玉県がオリンピック開催に伴うCO2排出量をオフセットできるカーボン・クレジットを組織委員会に寄付した例もある。加えて、米国では、既に脱炭素を達成しているGoogle社が、過去の排出(カーボン・レガシー)をオフセットしている。……