政治

「リスクゼロなら仕事もゼロ」のジレンマ

2023年1月10日

緊急人道支援と開発支援の間には、現地にネットワークを構築し、ニーズを汲み取り、「ギャップ」を生じさせずに経済開発や住民参加型のコミュニティ開発へ繋ぐという困難な課題が横たわる。実際には停戦違反も断続的に起きる紛争地の現場で、犠牲者を出さずにこれを実現するにはどのようなアプローチが必要なのか。ミンダナオ平和構築で行われた「継ぎ目のない支援」は、日本の外交的レバレッジ獲得にも結びつく貴重な教訓を示している。

 

1. 緒方貞子氏が見通した「平坦ではない和平プロセス」

 1960年代後半から開始されたミンダナオ紛争は、国内少数派(主にムスリム)が民族自決権を主張し、フィリピン国家からの分離独立を目指した局地的な自決型紛争である。40年以上に及ぶこの紛争は、スーダン(現在の南スーダン)、コロンビアなどと並んで世界最長の民族紛争のひとつに位置付けられる。

 その長期化の要因には、①フィリピン政府側[1]の和平に向けた方針・政策に一貫性と整合性が欠けていたこと、②大統領の政治的意思と政治資本の欠如、③双方の和平合意履行のコミットメント問題、④イスラーム系反政府勢力側(MNLF、MILF)の分派・党派化、⑤ムスリム有力氏族などの既得権者や政治エリートによる和平プロセスの妨害、などが挙げられる[2]

 こうした状況が続いたが、政府とMILFとの停戦合意が締結された2003年以降は海外ドナーの支援が加速し、関係者の間では数年内に和平合意が締結され、新たな自治政府が設立されるとの声も上がった。……

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