政治

「未完」のウクライナ軍建設史——政軍関係から見る「NATO加盟」へのハードル 

2023年1月20日

ソ連時代のウクライナ共和国軍を母体に結成された現在のウクライナ軍は、2014年のロシアのクリミア併合や東部の戦闘を受けて、NATO加盟国と同程度の軍事力を獲得し、最終的には同盟への加盟を目指しながら、「再建設」されてきた。しかし、汚職に繋がりかねない元兵士と政治家の恩顧主義的関係がハードルになりそうだ。ロシア・ウクライナ戦争で活躍した軍人の今後のキャリアに注視する必要がある。 

 

 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻以降、最前線でロシア兵と戦っているのがウクライナ軍である。その歴史をひもとくと、ウクライナ軍はソ連時代のウクライナ共和国から引き継いだ軍隊をもとにしてつくられ、2014年以降の軍改革を通して、NATO(北大西洋条約機構)加盟国と同程度の軍事力を獲得し、最終的にNATOの一員になることを目指している。なぜウクライナがロシアとの戦争を継続出来るのかを理解するためには、米欧からの軍事支援だけでなく、それを運用するウクライナ軍の建設史を踏まえる必要がある。 

 本記事では、独立後からロシア侵攻までを対象にして、ウクライナ軍建設の道のりを概観する。それによって、ウクライナ軍建設史には、ソ連解体に伴ってウクライナ共和国から引き継いだ軍の「建設」と、NATO加盟国に求められる基準への「再建設」があったことを明らかにする。その上で、政軍関係のあり方を見ると、ウクライナのNATO加盟に向けた軍の再建設は未完であることを、元兵士と政治家の恩顧主義的な関係を幾つか紹介しながら指摘する。 

ウクライナ共和国軍からウクライナ軍へ 

 現在のウクライナ軍は、国軍と準軍事組織から構成される。国軍は防衛省に所属し、大統領を最高司令官とする。国軍には陸軍と海軍、空軍のほか、領土防衛隊やサイバー部隊、医療部隊などがいる。他方で、準軍事組織は国家親衛隊や国境警備隊、民間人保護部隊などから構成される。この国家親衛隊は主に内務省に所属し、現行の憲法体制では、最高ラーダ(議会)が首相の推薦に従って内務大臣を任命する。そのため、ウクライナの大統領が準軍事組織を一元的に管理しているわけではなく、大統領と議会の間で分割管理されている[1]。 ……

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