政治

シリア「アラブ連盟復帰」も現実化させた「危うい中東新秩序」

2023年5月15日

アラブ諸国のシリアとの対立路線転換が、ついにシリアのアラブ連盟復帰という大きな節目を迎えている。中国の仲介外交が演出したサウジ−イランの接近と、それが象徴する中東秩序の再構成を、アサド政権はしたたかに生かしている格好だ。だが、シリアの「安定」は依然として危機の強引な封じ込めに過ぎない。

 3月に中国の習近平国家主席によるトップ仲介外交で合意したサウジアラビアとイランの外交関係正常化。これを機に中東からの撤退を急ぐ米国に代わって、地域での影響力確保を狙う中国がプレイヤーとなった新しい中東秩序の建設がはじまっている。この過程に思わぬかたちで「勝者」に浮上しつつあるのが、長く国際社会で孤立してきたシリアのバッシャール・アル・アサド大統領である。戦争と制裁を生き延びた父ハフェズ・アル・アサドから受け継いだ冷酷な権謀術数は、中東の将来に火種をひろげるリスクをはらむ。

 5月19日にサウジアラビア首都リヤドで開催予定のアラブ連盟による首脳会議。中東地域の盟主としてみずからをアピールしたいサウジの若き実力者ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子は、この場に「仇敵」アサド大統領を招いた。アサド大統領は2010年末からの中東民主化運動「アラブの春」の後、反体制派を弾圧しアラブ連盟への参加資格を剥奪されていた。

 ムハンマド皇太子にとっての最大の関心は、サウジの経済利益につながる中東の安定だ。脱石油の国家改革プランである「ビジョン2030」を実現させるため、外国企業の投資を切望する皇太子は地域の不安定要素を取り除く必要に迫られている。イランとの和解の背景にはイエメンやシリアの内戦を終わらせたいという思惑があった。シリアのアラブ連盟復帰は地域情勢の安定をサウジがアピールする大きな材料になるだろう。

 シリアのファイサル・アル・メクダド外相は4月中旬にサウジ西部のジッダを訪問した。シリア外相としては2011年以降で初めてのことだ。内戦に伴い周辺のアラブ諸国やトルコに流出したシリア人難民の帰還、2月に起きた地震被災者の支援などを話し合った。その後、アラブ関係国とシリアはヨルダンなどで外相会議を重ね、シリアのアラブ連盟復帰が決まった。……

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