世界最大の原子力企業であるロシアのロスアトムを標的とする制裁の動きが始まった。ウクライナ戦争で本格化した対ロシア制裁の中でも原子力は大きな抜け穴だった。濃縮ウランの輸入など世界が続けてきたロシア依存を考えれば、当然制裁で返り血を浴びる。だが覇権の行方がかかる戦争だけに、アンタッチャブルだった原子力ビジネスも無傷ではいられない。
バイデン米政権は英政府とともに今年2月、ロシアが占拠したウクライナ・ザポリージャ原発を運営するオレグ・ロマネンコの資産を凍結する制裁を科した。ロマネンコはザポリージャに配属される前は、ロシア南部のバラコボ原発で主任技師を務めていた。
表向きの理由はロマネンコが運営する欧州最大のザポリージャ原発の安全維持を怠ったことだ。ザポリージャ原発はロシアが攻撃したうえで占拠し軍事拠点を設けている。砲火でチェルノブイリ型の激烈な放射能事故が起きる懸念があり、国際原子力機関(IAEA)もたびたび警告を発した。
だが、ザポリージャ原発の安全維持違反を突破口にロスアトムへの経済制裁を科すという戦略は、ウクライナや欧米の専門家でつくる「対ロシア制裁国際作業部会」が昨年11月に発表したロシア原子力制裁の青写真で明らかにされていた。その第一歩が始まった。……