政治

資源開発に公正さを求めるラテンアメリカの人々――多様性から資源ナショナリズムを問う

2023年11月7日

資源価格が上昇傾向にある近年は、資源ナショナリズムが高揚しやすい状況にある。だが、国家と国民が一体で資源の管理強化を主張するという資源ナショナリズムの前提が、生物や人々の生き方の多様性を重視する流れの中でほころびつつあることも見逃せない。エクアドルとボリビアの興味深い事例を取り上げる。

 

資源ナショナリズムとは何か

 天然資源を自ら開発し加工する技術を持たない国にとって、資源の輸出は自国に収入をもたらすと同時に、価値ある資源を外国に売り渡す意味合いも持つ。こうした国では、資源開発の許可を外国の民間企業に与えることが多いが、政府に支払う鉱区のレンタル料など企業に課す負担の水準をめぐって、負担を上げて利益を取るか、あるいは下げて参入を促すか、その程度が問われる。この負担に関する考え方が極端になり、企業の納税水準を大きく引き上げる、企業が持つ資産を政府が接収するなど、輸出国による資源管理の強化を求める主張が生じることがある。これが資源ナショナリズムである。

 近年の資源ナショナリズムに関する研究では興味深い指摘がなされている。例えば、資源ナショナリズムは外国企業を受け入れる国が常に抱える政治イデオロギーではなく、その国で重要とされる資源の国際価格が上昇すると、それを引き金に高まる傾向があることが分かってきた1。一方、資源ナショナリズムには国家や国民が一体となって資源を自ら開発しようする姿勢が前提にあるが、そうした一体性を想定することへの疑問も出されている2

 こうした研究動向に照らすと、本稿が扱うラテンアメリカは非常に興味深い。21世紀に天然資源の国際価格が高値となった現象(コモディティブーム)は2014年に終わったが、石油やリチウムなど注目すべき資源の国際価格が2020年代に入ってから上昇傾向にある現在、資源ナショナリズムは発現しやすい状況にある。ところが、多くの資源輸出国を有するラテンアメリカでは近年、資源ナショナリズムが想定する一体性にほころびが見える。

開発しないという国民の選択

 今年8月、南米エクアドルで大統領選挙が行われた。立候補者が暗殺されたことは日本でも報じられたが、これと同時に石油資源に関する国民投票も実施された。同国のアマゾン熱帯雨林にあるヤスニ国立公園内の石油開発区域(油田名の頭文字を取ってITTと呼ばれる)について、政府は原油を「永久に地下に維持する」かが問われ、賛成が59%に達した。

 原油はエクアドルにおいて輸出額が最も大きい品目である。その総輸出額に占める比率は年々低下傾向にあるが、2021年時点で約3割を占める3。原油の国際価格は高値が続き、原油を売る動機が強い状況にもかかわらず、油田開発を否定する決定が下された。

 ヤスニの熱帯雨林は樹木から両生類まで世界屈指の生物多様性を持つ。また、都市とのつながりを自発的に拒み、狩猟採集生活を営む先住民が居住している。一方、ITT以外の熱帯雨林における石油開発では、企業の不十分な管理に起因する原油の流出が環境汚染や健康被害を引き起こしており、石油開発の是非は長らくエクアドルで論争の的であった。……

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