- どんぶらこ、海を渡る――外国の画家が「桃太郎」を描いてみたら|第1部・プロジェクトのはじまり
まず、インドネシアのバリ島の伝統絵画「バトゥアン絵画」をご紹介したい。バリ島は、2022年にG20サミットが開催されたことで世界的に注目を集めたが、日本人にとってはそれ以前からリゾート地として有名である。インドネシアは人口の9割近くをイスラム教徒が占める国だが、バリ島だけはヒンドゥー教徒が9割を占める。歴史を辿れば、4~5世紀にヒンドゥー教や仏教がバリ島に伝来し、その後、それらが土着の宗教と融合することで、インドとはまた違ったヒンドゥー教文化が花開いた。
島の伝統的な絵画の一つであるバトゥアン絵画は、中部のバトゥアン村で描かれる。黒と白を基調に、岩絵具の色彩が加えられて、全体的に奥ゆかしい印象を与えるのが特徴だ。
最古の記録は1022 年の勅令にまで遡り、芸術家たちは地元ギャニャール王国の宮廷に献上する絵画を作っていた。その後も形を変えながら伝承されていたバトゥアン絵画は、1930年代に当時の宗主国オランダ文化の影響を受けて、さらに独自のスタイルに進化を遂げた。
今回プロジェクトに参画頂いたのは、そんなバトゥアン絵画の画家イ・マデ・グリヤワンさんだ。同氏は自ら描くだけでなく、自宅をバトゥアン絵画の学校として後進を育成するなど、伝統文化の保存に強い思いを持っている。このプロジェクトを説明したところ、真っ先に関心を寄せて下さり、参画を即諾して下さった。……