経済・ビジネス

【Explainer】「スウィフトノミクス」が幻である理由

2024年7月7日

ヨーロッパ経済は過去2年間の大半を不況の回避に追われ、米国に大きく後れを取った。テイラー・スウィフトのツアーは、目前に迫ったパリ五輪やそれに先がけてドイツで開催中のサッカー欧州選手権(ユーロ2024)と並んで、景気のカンフル剤となることが期待されている。ただし、ひとつ問題がある。「スウィフトノミクス」は幻なのだ。

[フランクフルト発/ロイター]アメリカの人気歌手、テイラー・スウィフトがヨーロッパを席巻している。ダブリンからウィーン、さらにはその先にいたるまで数十回に及ぶ公演はいたる所で完売。思いもかけぬ経済効果に言及する識者も現れはじめた。

 だが、いかに彼女が音楽業界に革命を起こすメガスターであろうと、ライブの興奮が冷めてみればその経済的利益は微々たるものだ。

 たとえばスウェーデンのストックホルム。5月に行なわれた彼女の3回の公演には、のべ18万人近いファンが押し寄せたうえ、その半数は海外からで8億5000万クローナ(130億円)近い売り上げをもたらした。

 わずか3日間としては素晴らしい金額だ。しかし、年間GDP(国内総生産)は6230億ドル(100兆円)で欧州連合(EU)内8位と控えめなスウェーデンの経済規模から見てさえ、バケツの中の一滴に等しい。

 ストックホルム商工会議所でチーフエコノミストを務めるカール・ベルクヴィスト氏は次のように語る。「ストックホルム、なかでもその観光部門にとって、この売上高は週末の大きな追い風となる」「ただし、それもあくまで“ある週末”の話であって、経済成長全体に顕著な影響を及ぼすわけではない」。

 確かにホテルやレストランは荒稼ぎを果たし、スウィフト・ファンのマストアイテムになりつつあるカウボーイハットの売り上げも155%急増したと商工会議所は見積もっている。

 それでも、物価への影響も取るに足らぬもので、1年前にビヨンセがこの街でコンサートを行なった際に一時的なインフレ不安まで引き起こしたときを下回る可能性すらある。ビヨンセ効果いかんにかかわらず、スウェーデンのインフレ率は当時の10%から現在は2%強まで下がっている。……

おすすめの記事

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの動画

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

ニュースレターを購読する

新潮QUEは、「問う力」を養っていくためのサブスクリプションサービスです。

無料登録する