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イランでも、そして最高値を更新し続ける株式市場でも――最も危険な言葉は何だったろうか

2026年5月24日


<span>イランでも、そして最高値を更新し続ける株式市場でも――最も危険な言葉は何だったろうか</span>
トランプ政権はジョンソン政権の5年間にわたるベトナム政策を、わずか2か月で駆け抜けてしまったとの指摘も (C) REUTERS/Kylie Cooper

  米国とイランの戦闘停止に向けた交渉が進む傍ら、仲介国として活発な動きを続けるパキスタンが、イラン向け貨物に優遇措置を導入しました。米イラン対立の先を見据えた動きだとNikkei Asiaは解説します。中東ではエジプトに次ぐ人口を抱えるイラン市場にアクセスする、貿易ハブの役割を獲得することがここでのパキスタンの狙いです。

 イラン戦争をめぐる議論において、「中東アラブ諸国はイランと対立してきた。ゆえに米国とイスラエルのイラン攻撃を支持している」との図式的な理解の盲点は、イランという地域大国の存在感です。たとえばUAE(アラブ首長国連邦)のように、安全保障も含めて米国接近を明確化してきた国ですら、イランという隣国の大きさは無視できない。仮にこの先、米国が中東への関与を後退させれば、イランは再び実存的脅威として浮上します。

 本誌では滋野井公季氏が『テヘランは「パックス・イラニカ」の夢を見るか――イラン戦争後の国際秩序』で指摘するように、いま私たちが目の当たりにしているイラン戦争の長期化は、米国とイスラエルによる“イラン抜き”の中東地域秩序構想の限界を示していると言えそうです。停戦の行方すら見通すことは困難な状況ですが、今回は「ポスト・イラン戦争」に視線を向けた海外メディア記事に注目しました。

 先の米中首脳会談は、両国の念頭にある時間軸の違いがる理解のキーポイントだと考えられます。短期的な勝利をアピールできる“成果”を取りに行った米トランプ政権と、2050年頃に実現する「中華民族の偉大な復興」に向けた長期シナリオの一環として対応した中国の習近平指導部。この時間軸の違いは、貿易・経済の分野においては「制度化された棲み分け」という形をとったと安田佐和子氏は分析します。

 この短期的成果によって駆動されるという性質は、トランプ政権にますます鮮明になってきています。それは、ジョンソン政権、ニクソン政権にとってのベトナム戦争と同様に、米国を泥沼に引き込むのではないか。こうした懸念の声は決して少ないものではなく、米「フォーリン・アフェアーズ(FA)」誌に寄稿(詳細、後出)したギデオン・ローズ氏は、最も危険な言葉は願望的思考が生む「今回は違う」であるかもしれないと述べています。

 ところで、この「今回は違う」の危うさ。イランで戦争が起きようがウクライナの戦争が終わらなかろうが、AI(人工知能)バブルが幾度指摘されようが、最高値を更新し続ける各国株式市場にも向けておくべきかもしれません。クリントン政権時代の財務長官で米ゴールドマン・サックスの共同会長も務めたロバート・ルービン氏が英「フィナンシャル・タイムズ(FT)」紙で警鐘を鳴らしています(詳細、後出)。調べたところFTへの寄稿は12年ぶりでしたし、あまり表舞台でこうした発言をする人物ではない印象があり、読んでおきたいところです。

 他に“イランの次”の可能性が高まるキューバについての論考も加え、新潮QUE編集部が熟読したい海外メディア記事5本。

 みなさんもぜひご一緒に。

Iran as Vietnam, Ukraine as Korea【Gideon Rose/Foreign Affairs/5月20日付】

「トランプ政権は、ジョンソン政権の5年間にわたるベトナム政策――参戦、戦力増強、行き詰まり、そして交渉――の全過程を、わずか2か月で駆け抜けてしまった。今や、事態はニクソン政権の領域に入っている。まずは威勢のいい脅し、続いて不本意な合意を通じて撤退する必要性を徐々に認識する段階だ。このペースが続けば、イランへの介入もあと数か月で終わるはずであり、そのころにはすでに責任のなすり合いが始まっているだろう」

 このような見方を示すのは、米外交問題評議会(CFR)の非常勤上級研究者で、『終戦論――なぜアメリカは戦後処理に失敗し続けるのか』(原題『How Wars End: Why We Always Fight the Last Battle』)という著書も持つギデオン・ローズ。FA誌サイトに「ベトナムのようなイラン、朝鮮のようなウクライナ」を寄せ、イラン戦争にはベトナム戦争との、ウクライナ戦争には朝鮮戦争との共通点が多いことを指摘し、戦争の終わり方についての予測を打ち出している。

 このうち、イラン戦争の現状についてのローズの分析はこのようなものだ。

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