「デジタル・ロックダウン」の下で交わされた握手
「中国から持ち込まれたものは何一つ機内に入れない」――トランプ大統領の訪中に帯同したニューヨーク・ポスト紙のホワイトハウス担当記者、エミリー・グッドイン氏がXに投稿したこの一文は、今回の米中首脳会談の本質を象徴している。帰国便のエアフォース・ワンに乗り込む前、中国側から受け取ったピンバッジ、プレス証をすべて回収箱に入れることを求められた。
FOXニュースによれば、マルコ・ルビオ国務長官など閣僚からテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)など、代表団は出発前に個人のスマートフォンとノートパソコンを米国に置いて出発し、「クリーン・デバイス」と呼ばれる初期化済みの仮設端末のみで行動した。一部端末には、帰国後に改竄の痕跡がないかどうか照合可能なように、「ゴールデン・イメージ」と呼ばれる基準状態のデータが組み込まれたという。米国代表団には、「デジタル・ロックダウン」が課された格好だ。
これほどの警戒態勢を敷いた上で行われた両首脳の会談について、トランプ氏は「素晴らしい(進展を得た)」と表現。中国側は、外交部の発表に基づけば、習近平国家主席は「歴史的」「画期的」と評している。ただし双方は共同声明を出しておらず、別々に成果を公表するという形式を踏襲した。同じ会談の「成果」について、両国の打ち出し方はかなり違う。
「短期の実利」を狙ったトランプ、「長期的思惑」で動いた中国
会談の商業的成果をめぐっては、実利の力点において明確な違いが存在する。ホワイトハウスが発表したファクトシートは、中国による「ボーイング機200機の購入合意」と「2026〜28年に年間170億ドルの米国産農産品の購入」を前面に押し出した。この農産品購入枠は、2025年10月に成立した大豆購入(2025年は1200万トン、2028年まで各年2500万トン)とは別枠だ。トランプ政権1期目の米中第1段階合意での2000億ドル以上の米国産品の追加購入・輸入も未履行のままだが、中間選挙に向けた「分かりやすい政治的勝利」が演出された【チャート1】。
一方、中国商務部の発表では、ホワイトハウスのファクトシートには示されていない実質的なバーター取引が浮き彫りになっている。