7月31日未明、イラン訪問中のハマース指導者イスマーイール・ハニーヤ政治局長が殺害された。ハニーヤは前日の30日に開催されたマスウード・ペゼシュキヤーン新大統領の就任式に出席するために在住先のカタールからイランを訪問しており、前日にはハーメネイー最高指導者と会談する様子も公開されていた。報道によると、ハニーヤはイランの首都テヘラン北部にある宿泊先に滞在しているところを攻撃され、ボディーガード1名とともに殺害された模様である。
暗殺の実行犯について確定的な情報はまだ出ていないが、ハマースは声明でイスラエルを糾弾している。イスラエルは疑惑について立場を明らかにしていないが、国外における暗殺作戦については関与を肯定も否定もしないことが通例であるため、各種報道や専門家の分析はイスラエルによる暗殺であったことを前提にして進められている。
ハニーヤの暗殺は、昨年10月から続くガザ戦争の終結をさらに遠のかせることになるだろう。停戦交渉が暗礁に乗り上げて久しいが、指導者を暗殺されたハマースはイスラエルとの停戦に合意するどころか、交渉が継続されるかも危ぶまれる事態だ。
政治部門の「顔」だったがガザ地区内を統制しきれず
イスラエルによるハマース幹部の暗殺は開戦以降に何度も起きている。しかし、前線から遠いところにいる在外政治指導部の指導者が標的にされたことは、これまでの事例と性質を大きく異にする。イスラエル軍は7月13日にガザ地区のハーン・ユーニス近郊において軍事部門司令官のムハンマド・ダイフとハーン・ユーニス部隊のラーファウ・サラーマ司令官を標的にした空爆を実施している。これは民間人多数を巻き込んだことで非人道的な攻撃として非難されているが、2023年10月7日の奇襲攻撃に直接関与したとみられる軍事司令官を戦時下のガザにおいて攻撃の標的にしたこと自体は、国際社会からもほとんど問題視されなかった。……