- 非戦略核の軍事的合理性を再考する――石破総理「ハドソン論文」に見える核抑止論の検証(上)
非戦略核のプラットフォームにおける問題も見過ごせない
石破論考に言うような「核共有」を米国が実際に認めるか否かはさておき、次にそれをどのような手段で実現するかも問題となる。この点を分かりやすく整理した論考も既にあるので詳細は省くが、最も大きな問題は、現在米国の事実上の非戦略核(低出力核)オプションが、①核・通常両用航空機(DCA)で運用するB-61核爆弾(100個)、②SLBMに搭載する低出力核W76-2(25個)、③戦略爆撃機B-52Hに搭載する空中発射型巡航ミサイル(ALCM)(500個)という3つに限られるという点である9。このうち、②及び③は遠距離からの投射が可能であるため日本への配備や共有は必要なく、①では中国の密度の濃い対空脅威を突破できるか疑問が残る。このような状況を踏まえれば、現時点で核共有や日本への持ち込みを行う米国側のインセンティブはなく、日本側にそれを求める軍事的根拠も弱い。
一方、これらよりはまだ地域への展開に軍事的効果が見込めるものとして、トランプ政権が着手し、バイデン政権が中止した海上発射型核巡航ミサイル(SLCM-N)(スリコム・エヌと読む)がある。
SLCM-Nは、1980年代に配備が開始され、1991年にジョージ・H・W・ブッシュ大統領により運用から外され、2010年にバラク・オバマ大統領によって廃止が決定された核トマホーク(TLAM-N)の機能を継承するものであるが、他の手段との機能重複、資源配分における優先順位上の問題などにより、バイデン政権が開発を中止していた。しかし米議会は開発予算を計上し続け、政府に開発を義務付けている。2024年4月、ウィリアム・ラプランテ取得担当国防次官は、海軍にプログラム・オフィスを立ち上げ、兵器としての有効性の分析に着手することを指示したと明らかにしている10。バイデン政権がSLCM-Nの開発に少なくとも前向きではないことは明らかだが、その開発動向は今後の米政権交代にも左右されることとなり確定的なことは言えない状況にある。……