政治

トランプ再選で改めて注目される「BRICS拡大」と「脱ドル化」の行方(後編)

2024年11月19日

統一性を欠くBRICSはいずれ空中分解するとの見方もある。しかし、一元的な経済システムと安全保障システムとして構成されたEUやNATOとは違い、多元主義を掲げるBRICSはバラバラであること自体が共通の利益だ。BRICS首脳会議に合わせ、中国とインドが国境紛争の緩和につながる合意を締結したように、BRICSが共通利益の調整をするフォーラムとして機能していることが注目される。

  • トランプ再選で改めて注目される「BRICS拡大」と「脱ドル化」の行方(前編)

アフリカ大陸の5つの「準地域」を網羅

 今回新たにBRICSのパートナー国となった13カ国のうち、トルコは、ユーラシア中央部のロシアと中東を結ぶ地域大国のパートナー加盟国として、注目に値する。旧ソ連圏からもベラルーシ、カザフスタン、ウズベキスタンがパートナー国となった。BRICSを通じてロシアが立場の強化を図ろうとしている動きがさらに明確になった。
 アフリカからは、カザンに代表を送っていなかったナイジェリア、ウガンダ、そしてアルジェリアがパートナー国となった。アフリカでは、北部・東部・中部(大湖地域)・南部・西部という「準地域」の考え方が強く、大陸全体を扱うアフリカ連合(AU)も、5つの準地域機構と密接な結びつきをもって運営されている。南部アフリカの南アフリカ、昨年加入した東部のエチオピアに加えて、西部のナイジェリア、中部(大湖地域)のウガンダが加盟する手続きに入ったことによって、BRICSはおおむね5つの準地域から加盟国を迎え入れる仕組みが整うことになった。

 なおアルジェリアについては、昨年に加盟に強い意欲を見せながら、エジプトの加盟だけが認められたことに立腹し、BRICSへの態度を硬化させたと伝えられていた。これを考慮して、北部からは特別に二つの有力国が加盟する流れとなった。このような調整措置は、今後も引き続き導入されていくだろう。それにしてもアフリカの準地域の仕組みを十分に意識したうえで、拡大が進められていることは、戦略的な計算を施したうえでの拡大であることを印象付ける。

 ユーラシア中央部「ハートランド」のロシアから、中東を貫通してアフリカ大陸に伸びていく加盟国の並び方は、今やBRICSの背骨と言ってもよいほど、太い柱になり始めている。ユーラシア大陸とアフリカ大陸の接合性に着目し、両者をあわせて「世界島」と呼んだのは、イギリスの代表的な地政学理論家ハルフォード・マッキンダーだったが、プーチン大統領がこのような地政学の考え方に深い関心を持っているだろうことがうかがえる。

東南アジアからも複数の加盟国候補

 今回のパートナー国拡大におけるもう一つの大きな焦点は、東南アジア諸国の動向だ。この地域では、ASEAN(東南アジア諸国連合)創設国5カ国の国力が大きい。そのうちの3カ国(インドネシア、マレーシア、タイ)が、親露的なベトナムとあわせて、今回BRICSのパートナー国になった。特に人口やGDP(国内総生産)において圧倒的な存在感を持つインドネシアが入った意味は大きい。同国とマレーシアはマラッカ海峡を管理する重要な2カ国でもある。現在のASEANで明確に親米的で反中的な政策をとっている有力国は、フィリピンくらいだろう。残る有力国のシンガポールは、豊かな国ながら小国であるため、より穏健で中立的である。BRICSは今後、地域としての東南アジア全体を取り込んでいくための強固な基盤を獲得したと言える。これは中国にとっても大きな勝利だろう。……

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