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Vol. 1

島尾敏雄『死の棘』で描かれた「夫婦の修羅」の“その後”を辿る

2026年5月1日


<span>島尾敏雄『死の棘』で描かれた「夫婦の修羅」の“その後”を辿る</span>
島尾敏雄氏(1977年撮影)

 1917(大正6)年生まれの作家・島尾敏雄の代表作『死の棘』は不倫を題材にした私小説である。配偶者の長年の不倫が発覚したことで精神を病んでしまった妻(ミホ)に、激しい怒りをぶつけられる夫(トシオ)。精神を崩壊させていく妻との極限状態の日々を淡々と綴った同作は、最後はミホの入院する場面で終わっているが、“その後”の人生はどのようなものだったのだろうか。2人の雑誌への寄稿の内容や、担当編集者の証言を元にその軌跡を辿る――。

※本稿は「新潮45」2006年4月号に掲載された特集を元に再構成したものです。また、年齢や肩書、年代表記等は当時のものです。(文中敬称略)

「あなたさま、と言いなさい」

 <私たちはその晩からかやをつるのをやめた>

 島尾敏雄文学の最高峰作品として知られる『死の棘』(新潮文庫)の、書き出しである。

 その日、別の女性の家に泊まった島尾が東京小岩の自宅に戻ると、六畳の彼の仕事場には、インクがぶちまけられ、女性との情事の痕跡を留める日記が、うち捨てられていた。……

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