欧州政治で近年生じた顕著な変化の一つは、イタリア首相ジョルジャ・メローニ(48)の台頭だろう。扱いが難しい米トランプ政権幹部らと対話できる関係を結び、ロシアに対しては毅然とした態度を示して世論を牽引する。国内でも、中道から右翼にまで広がる連立内閣を束ね、世論の支持を得て無難な政権運営を続けている。ドイツでショルツ政権が崩壊し、フランスのマクロン政権が少数与党となって四苦八苦する中で、「欧州で最も安定した政権はイタリア」という、かつてない現象を生み出した。
メローニはなぜ、このような影響力を持つに至ったのか。実際の政権運営はどうなっているのか。2024年12月にローマを訪ねる機会があり、識者に話を聞いた。
外交の2本柱「大西洋」と「ブリュッセル」
ローマ中心部、テベレ川近くに位置するファルネーゼ宮は、設計の一部にミケランジェロも関わったという16世紀イタリア建築の傑作である。現在はフランス大使館が入居するその建物と広場を挟んで反対側にあたるカフェに朝9時、ネクタイ姿に上着を羽織った男性が「やあやあ」と言いながら現れた。イタリアで中道左派政権にかかわってきたファブリツィオ・パガーニ(58)である。
パガーニは2010年代、レンツィ政権の財務相ピエール・カルロ・パドアン(75)の官房長、首相エンリコ・レッタ(58)の経済補佐官やG20シェルパなどを歴任した。自他共に認める左派系の経済学者で、2022年総選挙で中道左派勝利の場合には要職への起用が取り沙汰され、財務相を予想する声もあったが、メローニ政権誕生で実現しなかった。現在はイタリアのグイド・カルリ社会科学国際自由大学教授、パリ政治学院教授として国際経済政策を教えるほか、企業経営にもかかわる。……