大手百貨店の2024年度決算は、三越伊勢丹、高島屋、J.フロントリテイリング、エイチ・ツー・オーリテイリングの4社とも増収増益を達成し、軒並み過去最高益を更新、絶好調ともいえる結果となった(図表1)。富裕層、インバウンド向けの高額商品の売上増加が貢献しており、特に、訪日外国人客の動線が重なる大都市基幹店における免税売上(インバウンド)が大きく寄与したようだ(図表2)。各社の免税売上実績は5~8割増と大きく伸びて、総額売上拡大の過半を占めており、前期の増収に大きく貢献したことがわかる。訪日外国人数は着実に増え続けているため、このインバウンド需要の拡大は今後も期待出来そうに思うが、今期の百貨店大手各社の免税売上目標はマイナスで設定されている。実は百貨店免税売上は、2025年3月以降、マイナスに転じているのである。すこし様子をみてみよう。
今年3月からインバウンド売上に急速なブレーキ
日本百貨店協会によれば、百貨店のインバウンド売上は、新型コロナウイルス収束以降、大幅な増加が続き、2024年度第3四半期も2~3割増を維持してきた。しかし2025年に入ってからは急速にブレーキがかかり、2025年3月には前年同月比約1割マイナスとなり、4月にはマイナス26%、5月にはマイナス40.8%と減少幅が拡大した(図表3)。この主要因は単純で、2023年から円安に振れていた円相場が、2024年夏ごろをピークに円高に戻し始めたということであり、それは百貨店免税売上高と米ドル円相場の動きを並べれば一目瞭然となる(図表4)。コロナ前の2019年12月あたりでは110円前後だった米ドル円相場は、2024年には160円あたりまで円安に振れ、インバウンド客にとって、日本での買物は毎日が3割引きセールのような「祭り」状態に突入していた。そして相場が円高方向に戻すにつれてその熱気が冷えてきた、というわかりやすい話である。
ただ、これはブランド品などの高額品に関してのことであり、土産的な小口の買物に関しては、そこまで大きな影響は受けていないようだ。三越伊勢丹と並んで免税売上国内有数の企業であるPPIH(ドン・キホーテの運営会社)では、2025年4月の免税売上はプラスとなり、過去最高を記録した。
コロナ禍で大きなダメージを受けた百貨店市場は、アフターコロナで急回復を見せたのだが、それは富裕層、インバウンドによる高額品売上が大きく伸びたことによる。その傾向は前々期、前期の百貨店の商品別売上をみてもうかがい知ることが出来る(図表5)。2023年と2024年の比較で、売上が大きく伸びたのは、身のまわり品(ブランド品が含まれる)、雑貨(化粧品、宝飾品、貴金属など)であるが、それはインバウンドによるブランド品、化粧品の購入、富裕層による宝飾品、貴金属の購入によって支えられている。コロナ後の富裕層売上の増加とは、コロナ期間中に使い道がなくて貯まってしまった富裕層の余剰資金の一部が、「投資」対象として選ばれた高級時計や宝飾品、貴金属製品に化けた、と思ってもらえればいい。そして、インバウンド需要も、富裕層の投資も、大都市に集中しているのである。……