経済・ビジネス

南アフリカは「ものづくりが根付かぬ国」から脱却できるか:現地自動車産業にみる構造要因

2025年12月2日

人種対立に注目が集まる南アフリカだが、社会不安の背景には経済低迷と高い失業率の問題がある。かつてはサブサハラのGDPの約4割を産出したものの2023年のシェアは2割以下に低下、1人あたりGDPもこの15年ほどは低下傾向が続いている。なぜ、南ア経済は伸びないのか。牽引役が期待されてきた製造業の抱える構造的課題に着目し、地場産業が育たない要因とその政策的背景を分析する。日本の「カイゼン」導入の試みも紹介し、持続的成長に向けた道筋を探る。【編集:近藤修一、PAX株式会社】

 グローバルサウスの枢要国の一角である南アフリカであるが、その経済は低成長が続き、S&Pの格付も投資適格以下が続いている。特に製造業の低迷が課題となっており、本稿ではその要因と帰結について議論する。筆者は経済学のツールを用いて途上国の分析を行う開発経済学を専門としており、南アフリカの自動車産業についての企業データを用いた統計分析を行ったことがある1。また、後述する通り、本稿は南アフリカにおいて執筆した。

1人あたりGDPの低下が続く

 まず、世界銀行のウェブサイトより閲覧できるマクロ経済データに基づいて南アフリカ経済を概観してみる。アパルトヘイトが終焉し選挙によってネルソン・マンデラが大統領となった1994年には、南アフリカの1人あたりGDP(国内総生産)は4258ドルであった。その後、2000年代に入ってからは鉱物資源ブームにより南アフリカが産出する金や白金の国際価格が高騰したことにも後押しされて、15年後の2009年には5847ドルにまで成長した。しかし、その後の15年間は停滞し(それどころかいくらか衰退し)、2024年の時点での1人あたりGDPは5709ドルとなっている。なお、いずれの数字も2015年の物価を基準とした実質値であるため、そのままの比較が可能である。1994年の時点で南アフリカはサブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南のアフリカ)全体のGDPの約4割を産出していたが、経済の低迷により2023年にはそのシェアは2割以下にまで低下しており、南アフリカのアフリカにおける影響力は縮小してきている。

 こうした南アフリカにおける大問題が失業率である。1994年の時点で既に23%と高い失業率であった。それが2009年には24%と微増し、その後2024年には33%にまで大幅に増加している。現在では働きたい人の3人に1人が失業している状態であり、異常だと言わざるを得ない。

 高い失業率の背景にあるのが製造業の停滞である。GDPの内訳をみてみると、製造業由来のGDPの割合は1994年の21%から、2009年には15%、そして2024年には13%と低下し続けている。1994年の時点で、GDPに占める製造業のシェアは同程度の経済発展段階にある国と比べて低かったが、その後の30年間でシェアはさらに低下した。製造業は雇用創出力が高いため、これが育っていないことが失業率を高める大きな要因となっている。筆者は、途上国の持続可能な成長のためには、製造業の中でも特に多くの雇用を生み出す労働集約型の製造業の活性化が不可欠だと考えている。……

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