※2025年8月12日「デイリー新潮」有料記事として配信されたものです。肩書等全て当時の情報です。
いくらきれいごとが語られようと、人は皆「学歴」を語りたがる。
「今年の新人、東大生がいるんだって」
「あのレストランの息子さん、中学受験はうまくいかなかったみたい」
一度そのレールに乗ってしまうと、プライドが芽生え、世間からの目も気になるようになり――。こうして簡単に「受験レース」から降りることは許されないのが、現代社会の実態といえるのではなかろうか。
もちろん、望み通りの学歴を手にすることができた生徒やその保護者は鼻高々であろう。しかしそんな“勝者”の陰には、それ以上の数の“敗者”がいるのもまた事実。
「教育業界は『学歴コンプレックス産業』とも言われます。誰しもが多かれ少なかれ、学歴に対する何らかのコンプレックスを抱えていて、100%満足しているという方はむしろ少数だと思います」
そう話すのは、学習塾業界誌「ルートマップマガジン」編集長で、これまで2万人以上の塾関係者を取材した経験を持つ教育ジャーナリストの西田浩史氏。
「たとえば地方では、公立のトップ高校に受かるか受からないかが世間話のタネになり、晴れてトップ校に受かった子の大学受験をめぐっても、『あの子は早慶どころかMARCHもダメだったみたい』などという評がつきまとう。世間の期待から大きく離れた大学にしか受からないとなると、プライドはボロボロになってしまい、地元の人達とは疎遠になってしまうケースも多いのです」
トヨタから楽天まで……留学生の採用は“別枠”
そんな悲劇に対する特効薬といえるかもしれない。一度乗りかかった受験レースから外れ、“外”に救いを求める手段が、一つの道として確立されつつあるのだ。
「『アイビーリーグ』などのトップ校を目指す優秀層のみならず、国内の高校受験や大学受験でうまくいかなかった生徒が、海外大学や大学院を目指すという事例が昨今増えてきています」
と、西田氏は続ける。
「海外大学に行けば、ガチガチにレールが敷かれた日本の受験戦争とは別の次元に移ることができます。日本では全く知られていないような大学でも、その経験は日本の就職活動でも評価されるし、当然後の社会人としての人生にも大きなプラスになる。何より、いわゆる旧帝大や早慶、MARCH、日東駒専など、世間から付けられるレッテルから離れ、海外大に進学したという、相対評価によらない一定の見られ方をされるようになるという意味で、一つの“逆転ルート”として大いに価値のある選択肢だと思います」
なるほど、いくら日本では知られていない名前の大学でも、「海外大学で学んだ」という事実自体が、一目置かれる要素となりうるということか。
「『日東駒専』とくくられる偏差値の大学に行くよりはむしろ、無名の海外大学に進学した方が、国内での就職活動における評価も高いと言っていいと思います。いわゆる『Fランク大学』入学後に必死に勉強して海外大学に編入し、国内の大手重工業企業から内定を得た学生のほか、海外大学に行ったことで、トヨタ、三菱地所、東芝、楽天など錚々たる企業から内定を獲得した学生を数多く見てきました。有名なところでなくとも、海外大学で身に付けた語学力や積極性、あるいは日本よりも厳しいとされる卒業基準を満たすために学業に励んだ経験などは、日本の大手企業から大いに評価されているのです」(同)
ルートマップマガジン社の代表を務め、栄陽子留学研究所で留学カウンセリングの実務にも携わる、井上孟氏が説明を引き継ぐ。