戦争準備に本気の中国
今年3月16日、日米防衛相による対面会談において、台湾海峡で不測の事態が起きかねないとの懸念を共有し、台湾有事に際しては緊密に連携する方針も確認された。報道では、台湾有事を議題としたことが明らかになるのは異例とされたが(脚注1)、「異例」という言葉が表すように、これまで台湾問題は、まさにアンタッチャブルな案件として放置されてきた面は否定できない。しかし、昨今の情勢はもはやそれを許さなくなってきている。
2020年10月、中国軍制服組トップの許其亮・中央軍事委員会副主席は「受動的な戦争適応から能動的な戦争立案への態勢転換を加速する(脚注2)」と訴え、中国軍が積極的に戦争に関与していく方針を示唆した。習近平国家主席も同月、海軍陸戦隊基地において「全身全霊で戦争への備えに集中しろ、警戒態勢を維持せよ(脚注3)」と指導するとともに、翌11月には中央軍事委員会訓練会議における演説でも「戦争準備への集中」を強調するなど、まさに本気で戦争準備に向かう動きが目立っている。
中国側の強硬発言が相次いだ昨年10月、台湾空軍が中国軍機への対応で出動した回数がわずか2週間で1624回増加した。台湾空軍の黄志偉参謀長によると、年初から10月21日までの出動回数は4596回だったという(台湾メディア『中央社』2020年10月22日)。航空自衛隊の中国軍機に対するスクランブル回数がこの3年平均で約680回/年という数字も十分に異常であるが、台湾海峡はその比でない緊張状態にあることが分かる。
米国も危機感を強めている。米インド太平洋軍司令官フィリップ・デービッドソン海軍大将は今年3月9日、議会公聴会において「中国は野心を加速させている。台湾は明らかに野心の中にある」「6年以内に中国の台湾進攻があり得る」との見解を示した(『読売新聞』2021年3月17日)。また、次期インド太平洋軍司令官ジョン・アクイリノ海軍大将も上院軍事委員会で、「中国共産党は台湾統一を最優先課題にしている」「(武力行使の可能性は)我々の大半が考えているよりも迫っている」(『産経新聞』2020年3月25日)と発言するなど、極めて強い懸念を持っていることを明らかにした。……