筆者が代表世話人を務めている「新興国」と「エネルギー」をキーワードとしている異業種勉強会「金曜懇話会」には、様々なバックグラウンドを持った、多様な会員が集まっている。中には「IEA(国際エネルギー機関)」に出向勤務したことがある会員もおり、偶数月に開催している例会で一度「経験談」を話してもらったことがある。
興味深い裏話も種々あったが、筆者が今でも記憶しているのは、現在の事務局長(Executive Director)ファテイ・ビロルの就任が決まったとき「IEA」職員はこぞって喜んだ、というエピソードだ。
1958年3月、トルコのアンカラに生まれたファテイ・ビロルは「OPEC(石油輸出国機構)」などに勤務した後、1995年10月「IEA」に入り、事務局長に選任された2015年9月まではチーフ・エコノミストを務めていた。2019年9月に再選され、現在は4年任期の2期目にある。日本人として唯一人、この重責を務めた田中伸男氏のように、加盟国の官僚経験者が代々務めていた事務局長というポジションに、チーフ・エコノミストが内部昇格した、ということが、自分たちの仕事の重要性と成果が認められたと「IEA」職員たちが感じたのであろう。
「IEA」は、オイルショック時に米国などへの「禁輸」を先導し油価を急騰させた「OPEC」に対抗し、消費国として団結して立ち向かうために、時の米国ヘンリー・キッシンジャー国務長官の主導により1974年に設立されたものだ。石油安定供給確保を主眼とし、備蓄義務や緊急時融通制度などの施策を講じてきた。時を経て、ビロル事務局長は就任後に大胆な改革を行い、「IEA」は信頼できるデータベースを基にした石油・ガスを含む世界全体のエネルギー政策提言組織へと変貌している。最近では、持続可能なエネルギー供給の観点から、再エネへの「エネルギー移行」を主導している。……