政治

カブール陥落は「インテリジェンスの失敗」か?:リスクを甘受した米国が「次の戦争」に抱く危機感

2021年9月10日

カブール陥落が国際社会に与えた衝撃を見れば、アメリカが「成功」したとは言い難い。だが、インテリジェンス部門は国防軍の脆弱さを認識していたと考えられる。それでも撤退に踏み切ったのは、「対中抑止」という大戦略の観点から、リスクを甘受してでも実行すると政策判断したからに他ならない。ロシアや中国との「次の戦争」に「決定的な軍事的敗北を喫する」可能性があるという、米政府の切迫した危機意識が背景にある。

「認識」しても防げるとは限らない

   早いもので、ニューヨークとワシントンD.C.などを標的に行われた9.11テロ事件から今年で20年になる。この節目の年に米軍はアフガニスタンから完全撤収した。

  しかし、米軍の削減が呼び水となって、20年前に米軍の手で追われたタリバンが攻勢を強めた。アフガニスタン国防軍はタリバンの勢いを食い止めることができず(あるいは食い止めようとせず)、アシュラフ・ガニ大統領の国外脱出もあり、米軍の撤収が完了する前の8月15日に首都カブールが陥落した。空港から離陸する米軍のC-17にアフガニスタンの人々が押し寄せるショッキングな映像が広がったこともあり、「アメリカの失敗」が世界中に印象づけられる結果となった。

   この結果について、「インテリジェンスの失敗」ではないかという指摘がある。つまり、インテリジェンス部門が、アフガニスタン政府や国防軍の実力を過大評価し、またタリバンを過小評価し、それによって政策が誤ったのではないかという批判である。一方で、インテリジェンス部門はスケープゴートにされているとの指摘もある。

 筆者は、カブール陥落を「インテリジェンスの失敗」としてとらえるのは正しくないと考えている。歴史を見れば、インテリジェンス部門が評価を誤ったり、重要な情報を見逃したケースは数多くある。9.11テロ事件もその1つだ。しかし、インテリジェンス部門は全能ではない。彼らの適切な情報評価に基づき、政策部門がリスクを認識していたとしても、そのリスクを防げるとは限らない。カブール陥落はまさにそこに当てはまる。むしろ、なぜアメリカはリスクを甘受したのか。その背景にこそ重要な意味がある。……

おすすめの記事

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

おすすめの動画

すべて見る
戻るボタン 次へボタン

ニュースレターを購読する

新潮QUEは、「問う力」を養っていくためのサブスクリプションサービスです。

無料登録する