折からの衆院選を控えてのことだったからでもあろう。矢野康治財務事務次官が『文藝春秋』11月号(10月8日発売)に寄せた論考が話題を呼んでいる。「このままでは国家財政は破綻する」。その副題がメディアで大きく取り上げられ、「バラマキ」が人口に膾炙するようになった時点で、矢野氏は問題提起に成功したというべきだろう。
確かに選挙戦では与野党が給付金の額を競い合っている。与党側では公明党が「0歳から高校3年生までの全ての子どもに1人当たり一律10万円相当の支援」を主張。野党側では立憲民主党が「住民税非課税世帯など低所得者に年12万円を現金給付」、共産党が「1人10万円を基本に給付金を支給。年収1000万円未満程度含め対象に」と主張している。
財政の出を競い合う一方で、入りとなる税収については、野党の側は消費税の税率の5%への引き下げ(立民、共産、国民民主党、日本維新の会など)や消費税廃止(れいわ新選組)を公約に掲げる。そんななか、ほんの少し前までは「景気対策の遅れ」を批判していたメディアが、手のひらを返したように「選挙戦でのバラマキ合戦」を批判的に取り上げだした。
いま「非常時」の策を唱えることは妥当なのか
財政について何が正しいのだろうか。日本の財政はどのくらい傷んでいるのだろうか。そして本当に破綻するのだろうか。破綻するとしたら何をきっかけに。街行く人たちが首を傾げ出すなか、10月19日付『日本経済新聞』の「大機小機」欄に、「隅田川」氏が財務次官に呼応する一文を寄せた。「矢野次官は間違っていない」。その論点は――、……