政治

キッシンジャーがダボスで語った新たなウクライナの「正統性」と欧州の「均衡」(上)

2022年6月24日


<span>キッシンジャーがダボスで語った新たなウクライナの「正統性」と欧州の「均衡」(上)</span>
ダボス会議にオンラインで登場し、ウクライナ情勢について語ったキッシンジャー氏(「世界経済フォーラム」HPより)

波紋を広げたダボス会議でのキッシンジャー氏の発言は、「領土分割」が真意ではない。ウクライナに関する「中立的な国家」という自身の認識の修正と、ロシアを排除した欧州の均衡は成立しないという今後の秩序構築が論点だ。(後編はこちらのリンク先からお読みいただけます)

 先月開催された「世界経済フォーラム」(ダボス会議)において、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官がウクライナ情勢について語ったことが話題になった。キッシンジャー氏がウクライナに「領土の割譲」を迫った、と報じられたのである。これにウクライナのドミトロ・クレーバ外相やウォロディミル・ゼレンスキー大統領が反発する発言を行ったため、話題が増幅した。

 報道だけを見ると、あたかもキッシンジャー氏が野心的に論争的な発言をしたかのようだが、実際の当日のやり取りの書き起こしを読んでみると、むしろだいぶ違う印象を受ける。キッシンジャー氏が領土について直接ふれた経緯はない。また同氏が用いた表現も、かなり含意のある複雑なものだ。

 キッシンジャー氏は99歳の誕生日を迎える直前であり、ダボス会議にはオンラインで、司会者の問いかけに答える形で登場したに過ぎなかった。会議後も追加的な発言をしていない。もともとキッシンジャー氏の語り口は往時から、どちらかというと複雑で難解である。ダボス会議における発言も、非常にキッシンジャー氏らしい含み込んだ言い回しが、短い時間で濃縮に、用いられていた。

 回りくどいキッシンジャー氏の発言をニュースにするために、どこかのメディアがあえて煽情的な見出しを付けた、ということだったように思われる。確かにその背景には、図式的な意見対立の見取り図をあてはめたい風潮もあるだろう。……

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