政治

サウジアラビアの「産油国パワー」が抱える複雑な課題

2022年8月10日

国際原油価格を左右し得る世界最大の余剰生産能力は、一方で「巨額の開発投資をした設備を敢えて活用しない」という、他国にないコスト負担と表裏一体の関係にある。バイデン米大統領の中東歴訪に対するOPECプラスの「小幅増産」回答が注目されたが、サウジ自身の国家財政状況や世界経済の減速観測、あるいはロシアもOPECプラスのメンバーであることを考慮すれば、問題は一筋縄では行かない複雑さを持っている。

 ウクライナ危機以降の国際エネルギー情勢不安定化で、原油価格高騰が再び世界の大きな関心を集めるようになった。石油輸出国機構(OPEC)およびロシアなどの一部の非OPEC産油国が協力する「OPECプラス」産油国グループの生産調整政策の決定がニュースのヘッドラインを飾る機会も多くなっている。

 中でもOPECの盟主、サウジアラビアの政策動向への関心は高い。7月中旬には米国ジョー・バイデン大統領がサウジアラビアなど中東を歴訪し、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子と会談、両国の関係改善とともに原油増産を要請した。この異例ともいえる増産要請の後、OPECプラスは8月3日の会合で9月以降は日量10万バレル(B/D)の増産を決定した。サウジアラビアの戦略判断がこの小幅増産決定の背景要因として重要な役割を果たしたであろうことは想像に難くない。本稿では、サウジアラビアの「産油国パワー」を巡る様々な問題を取り上げ、掘り下げてみたい。

増産はサウジとUAE頼み

 国際石油市場で需給が逼迫し、原油価格が高騰する時、それを鎮静化させるための基本的手段の一つは供給を拡大することである。その際、重要な問題の一つは、市場の状況・必要に応じて、速やかに供給拡大を実施できるかどうか、という点になる。先物市場で原油価格が決定される今日、速やかな供給拡大は価格安定化に極めて重要なのである。

 供給拡大を決めてから油田を掘削して、開発し、生産を行うのでは間に合わない。意思決定後、直ちに生産を増やすには、現時点で生産していないものの「スタンバイ」している生産余力を有しているかどうかにかかる。……

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