令和の世相から痛感するのは、日本人は「バーチャルな戦争」が大好きだということだ。新型コロナが流行すれば「ウイルスとの戦争」だと言い募り、ロシアが開戦するやSNSのプロフィール欄にウクライナ国旗を掲げて「参戦」する。もちろん本人は、安全な国の快適な自室でモニターを眺めているだけである。
よく知られているとおり、こうした人々はしばしば「参謀」になりがちだ。従来はなんの興味もなかった話題でも、にわかに仕入れた情報で「とるべき戦略はこうだ」「従わない者は非国民」と呼号し出す。昭和のリアルな戦争と異なり、日本で過ごす分には間違えても頭上に爆弾は降って来ないからこそ、私たちの「参謀しぐさ」はますます歯止めを失っている。
実際に、戦前の著名参謀7名を扱う本書によれば、陸軍大学校の参謀養成のカリキュラムは意外なほど、主体的な思考を促すディベート型だった。教員が最初から正解を与えるのではなく、受講生自身に作戦を考えさせたのだが、それだとかえって異なる意見をきちんと受けとめず、威勢や詭弁で聞き手を圧倒するタイプがよい成績をとってしまう。ちょうど今日のコミュニケーション重視の教育方針が、知的な誠実さを欠く「論破屋」ばかりをSNSで跋扈させるのと同じだ。
多弁に反比例して思考は乏しくなる、こうした悪しき参謀志向の弊害は、どうすれば克服できるだろうか。本書が示す新しい処方箋は、7名の参謀それぞれの「戦後」を辿ることである。……