本年10月27日、バイデン米政権は、国防省から国家防衛戦略(NDS)を発表した。2018年にトランプ政権がNDSを発表して以来約5年振り、バイデン政権としては初めてとなる。10月12日に発表された国家安全保障戦略(NSS)を支え、国防省の優先任務や戦略環境等を記載する文書である。
新たなNDSは、バイデン政権が掲げる抑止コンセプトである「統合抑止」、すなわち、米軍・国防省だけではなく、米政府他機関や同盟国等との協力を統合して抑止力を高めていくという方針に沿って、同盟国等との協力強化を記述した節を設けた。その節で初めに登場する地域はインド太平洋地域、その次が欧州である。そして、インド太平洋地域の記述のうち、日米同盟が最初に言及された。
つまり、この節全体で最初に言及された同盟国は日本であり、個別国名として記述されなかった2018年の公表版NDSにおける同盟国の記述とは対照的である。一昔前であれば、米国の日米同盟重視の表れとして日本の安全保障関係者から歓迎されるような記述であり、事実、今米国が最も重視する同盟国の一つが日本であることは間違いない。
しかし、そのことがメディアで取り上げられることはなく、高揚感もない。あるのは危機感であり、それは、中国の軍事的膨張により米国の軍事力が相対的に低下してきていることに誰もが気付いているからだ。その危機感は米国も有している。それゆえに、対中抑止の鍵となる日米同盟を重視している。……