グリーンランド西部、観光の拠点であるイルリサットの街から歩いてしばらく行くと、ゴツゴツとした野原に犬ぞり用の犬たちが何十頭も繋がれていた。さらに進むと、荒涼とした風景とは少々異質な、いかにも「北欧デザイン」な建物が見えて来る。この先には世界遺産にも登録されている「イルリサット・アイスフィヨルド」があり、建物はそのビジターセンターだ。入るとスキー場のロッカールームのようなスペースがあり、靴を脱いで展示室に行く。
アイスフィヨルドとはその名の通り氷に埋め尽くされたフィヨルドで、その氷は「上流」にあるヤコブスハブン氷河から押し出されてくる。ヤコブスハブン氷河自体は、世界最大の島であるグリーンランドの8割、180万平方キロを覆う氷床(アイスシート)から伸びている。この氷河は南極以外では最も大量の氷山/氷を生む氷河で、その“年間産出量”は35立方キロメートルに上る。かつてタイタニック号を沈めた氷山もここから出て行った可能性が高いという。
1秒に失われる1万トンの氷
ビジターセンターにはそんなデータや様々な氷の種類を解説する洒落た展示、グリーンランド各地の氷河や氷床が立てる「音」をサラウンド状態で聞けるインスタレーションなどが並んでいるが、何よりもユニークなのが捻じれたような屋根で、その捻じれの端から上がれるようになっている。勾配を登っていくと、遠くにアイスフィヨルドの絶景がドラマティックに見えてくる、という仕掛けだ。
屋根を下って反対側に降りると尾瀬にあるような木道が伸びていて、比較的楽にアイスフィヨルドに到達できる。途中、地元の少年たちが車輪の大きな自転車でひょいひょいと我々をよけながら木道を疾走していく。……