ロシアによるウクライナ侵攻以来、約1年半が経過し、独ショルツ政権が発足して、1年9カ月が過ぎた。しかし、政権の人気は長期低迷から抜け出せないでいる。直近の2023年9月の世論調査(Forsa)で、今度の日曜日に連邦議会選挙があったなら、どの政党に投票するかという問いに対して、政権与党の社会民主党(SPD)は16%、緑の党は14%、自由民主党(FDP)は7%であった。最大野党のキリスト教民主同盟/社会同盟(CDU/CSU)の27%はおろか、極右政党と目されるドイツのための選択肢(AfD)21%にも及ばない結果となっている。
政府への満足度を問う質問に対しても、あまり満足していない(44%)、まったく満足していない(35%)を合わせると、実に79%の国民が政府の仕事に不満を持っているという状況である。
出典:Statista提供データより編集部作成(9月1日現在)
高評価を得られずにいるショルツ首相の「時代の転換点」
政権不人気の最大の理由はインフレ、特にエネルギー価格高騰が生活を直撃しているにも拘らず、政府の対策が的外れだという印象を与えていることだろう。この春ですべてのドイツ国内の原発は稼働を停止し、政府は暖房器具の省エネ転換を急がせる暖房法案の議会通過を急いでいる。2023年春の調査では、ドイツ人が重要だと考えている問題に、移民(36%)、環境と気候変動(28%)、価格上昇/インフレ/生活費高騰(27%)、国際情勢(26%)となっており、昨年夏に価格・インフレ懸念が40%であったのに比べると、ややインフレ不安は沈静化した形となっているが、それでも政府の政策がちぐはぐであるという印象は拭えない。最近やっと児童政策で三党合意が成立したが、すべての政策過程で財政規律を重んじるFDPと支出拡大を望むSPD、緑の党との不一致が目立ち、政策決定に時間がかかっており、リーダーシップの弱さととられる状況になっている。
超低空飛行のショルツ政府で、ただ一人気を吐いているのがボリス・ピストリウス国防大臣である。どのような世論調査を見ても、人気があるのは彼一人であり、あとは与野党どの政治家もほとんどポジティブな評価を得ていない。前任のクリスティーネ・ランブレヒト国防相が散々な評価だった後、レオパルト戦車を供与するか否かという騒動の最中に就任し、何とかドイツを中心とする「戦車連合」をまとめ上げ、今も国防省の官僚主義と闘い続けているというイメージを維持することに成功している。彼が登場するまでのドイツのウクライナ支援は、「少なすぎ、遅すぎ(too little, too late)」を地で行っていたので、その後何とかスピードアップしてきて、今では支援額ではイギリスを上回ってヨーロッパ最大のウクライナ支援国としての評価を定着させた立役者と言っていいだろう。
しかし、何故この評価が、オラフ・ショルツ首相の評価に反映されていないのだろうか。そもそもドイツ安全保障政策の大転換、「時代の転換点(ツァイテンヴェンデ/Zeitenwende)」を提唱したのはショルツ首相ではなかったのか。実は、ショルツ首相の「時代の転換点」自体の評価ははかばかしくない。まず、鳴り物入りで登場した1000億ユーロ(約15兆8000億円)の特別基金だが、実際はそれほど消化されていない。2022年度中に使われれば、防衛費をGDP(国内総生産)比で2%以上に押し上げるはずであったが、現実には全くそのような結果にはなっておらず、今年度の予算も2%には遠く及ばない。「時代の転換点」演説から1年経ったが、2023年度防衛予算は2022年度より3億ユーロ少なく、ショルツ首相自身、躊躇いながら圧力に押される形で少しずつしか変化を導入しなかったと野党CDU党首のフリードリヒ・メルツに批判されている。……