昨年秋、ドナルド・トランプ氏が再び大統領に選任され、われわれは米国社会が深層において激変している現実を目の当たりにした。就任直後から吹き荒れるトランプ旋風は、米国を、そして世界を直撃している。これまで禁じ手であったものを含め、何でもありの世界に放り込まれた。
さすがに米国の存在は大きい。全世界が混乱の度合いを深めている。トランプ政権の習性と強度の見極めがつくまでは、その場しのぎの対応となろうが、米国のトランプ症候群(シンドローム)については、取りあえずの解を出しておかないと、その後の大きな方向性を間違う。
新たなデモクラシーの模索
トランプ大統領は、大統領の権限を意識的に拡大し、米国の民主主義(デモクラシー)の根幹である三権分立に挑戦している。言論空間への支配を強め、トランプ大統領にたてつけない雰囲気は急速に拡大しており、その中で、自分に刃向かった者を潰している。現に、米国ではヒトラーの再来を心配する声さえ起こっている。
米国をよく知る識者は、トランプ・シンドロームは民衆革命の表象であり、現在の仕組みが持続不可能な格差を生み出した結果だと指摘する1。確かに、90年代の半ばに米国ジョージア州アトランタに住んでいたころ、すでに米国社会の軋みははっきりと感じとられていた。黒人や女性を優遇する積極的格差是正措置(アファーマティブ・アクション)による逆差別に、白人男性は怒っていた。新自由主義経済のもたらす競争社会は、転職ごとに減給する多数の一般労働者と、給料が増え続ける一部職種のエリートとの格差社会を生み出していた。……